アロマテラピーとは?植物の香りを生活に取り入れよう
街を歩いていて、漂う花の香りに気持ちが明るくなったり、逆に酷い匂いを嗅いで気分が悪くなったりと、人は香りによって気持ちや体調が変わることがあります。それなら、例えば「元気を出したいときにはこの香り」といったように、状況に合わせて香りの力を利用して、心身をコントロールできるといいですよね。それも、人工的なものでなく天然の成分であれば、安心して使えそうです。
そこで今回は、植物の香り成分を使って行う「アロマテラピー」についてお伝えします。初心者にも取り入れやすい方法や、香りの種類、そして、注意事項などをまとめています。アロマテラピーとは何か詳しく知るとともに、お好みの香りをみつけて暮らしに活かす参考になさってくださいね。
- 植物の香りを効果的に利用したい方
- 軽い不調を改善させる方法を探している方
- どの香りにどんな効果が期待できるのか知りたい方
目次
アロマテラピーとはどんなもの?
アロマテラピーとは、草花や木々などの植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)、あるいは植物の芳香を使って、心身のトラブルを穏やかにして回復を目指す自然療法のことです。嗅覚は五感の中で唯一、大脳新皮質を通さずダイレクトに大脳辺縁系に届く感覚。そのため、人は香りを嗅ぐと本能的に反応します。このことを活かして、さまざまな状態や症状を改善に導くのです。
ストレスを軽減したり、気持ちを落ち着けてリラックスしたり、気分転換でリフレッシュしたりといった精神面に作用するもののほか、消化促進や免疫機能の強化、ホルモンバランスの調整といった肉体面、さらには、睡眠の質の向上、あるいは美肌に導くなど、健康を保つことや美容にも役立つとされています。
日本のアロマテラピーの歴史
日本では、江戸時代に西洋医学が伝わってきた際に、精油を使った医療も知られるようになりました。一部の地域では精油を薬として利用した歴史もあるようです。ですがその後、アロマテラピーは1980年代に「イギリスの自然派美容マッサージ」として広まったため、日本では医療というイメージは薄くなったようです。
現在では精油の香りを美容法に取り入れたり、リラクゼーションの方法として楽しまれたりする一方で、医療の分野で補完・代替医療のひとつとしても捉えられています。特に、看護や介護の現場では病気の治療や予防、症状の緩和を目的として、また、病室の環境改善にも用いられています。
精油(エッセンシャルオイル)とは
アロマテラピーで使われる精油は植物由来の揮発性の油で、花、茎、幹、根、樹脂、果皮などを水蒸気蒸留することで得られます。それぞれの植物が持つ香りの成分が凝縮されたもので、大量の植物からほんのわずかしか取れません。例えば、バラの場合、1kgの精油を得るのに約5tの花を必要とするそうです。
精油と呼ばれるのは純度100%のものに限られます。精油に何か混ぜたり、似た香りになるように人工的に作られたものが「フレグランスオイル」や「アロマオイル」といった名称で雑貨店などで販売されていることがありますが、これらはアロマテラピーには使用できません。誤って使ってしまうと、効果がないばかりか、逆に悪影響が出ることがあるので注意が必要です。
また、純度100%であっても精油の品質には差があります。世界で生産されている精油の多くは、香りつきの商品を作る原料として消費されています。アロマテラピーではさらに高いグレードのものを使用するのが望ましいのですが、残念ながら市場に出回っている精油の中には、その基準を満たしていないものも多くあります。そのため、精油を購入する際は、信頼できる商品を選ぶことがとても大切です。
取り扱いは慎重に
自然由来のものなので害はないと考えられがちですが、そうではありません。精油は高濃度の複雑な化合物であるため、取り扱いには注意が必要です。
原液のままうっかり肌につけてしまったり、目の粘膜についたりしないように気をつけましょう。また、薄めて使っても肌に刺激となる場合があります。使用中に肌がかぶれたり、赤みが出たりしたら、すぐに大量の水で洗い流してください。
精油の中には妊産婦や3歳以下のお子さん、既往症のある方は使用できないものがあります。加えて、ペットを飼っていらっしゃる場合も注意が必要です。動物は種類によって化学物質の代謝や分解の能力に差があります。特に、猫やフェレットはわずかな量でも中毒反応をおこす危険性があります。前もってよく確認しておきましょう。
また、人によっては香りを嗅ぐことで頭痛や吐き気、アレルギー症状が出る「香害」となる可能性もあります。さらに、特定の薬品で相互作用を引き起こしたりすることも報告されているので、慎重に使用しましょう。
ほかにも以下のような点に注意して、安全に使用してください。
- 保管する際は、直射日光や高温多湿になる場所を避ける
- 容器を開けたら、半年、遅くとも1年以内に使い切る
- 手作りのアロマグッズは1〜2週間で消費する
- 精油には引火性があるので、火の気のない場所で使用する
アロマテラピーを暮らしに取り入れる方法
精油には多くの種類があり、それぞれに異なる効能が上げられています。それらを全て理解することは難しくても、自分に必要な部分だけでも知って、生活に取り入れられるといいですね。そこで、アロマテラピーの入門編として、知っておくと役立つ活用法をご紹介します。
アロマテラピー用に便利なグッズも多く販売されていますが、特別な道具がいらず、すぐに始められるやり方もあります。楽しみながら植物の香りを上手に使っていきましょう。
外出先でも香りと一緒
一番手軽なのは、ティッシュや小さな布、あるいはアロマストーンに精油を1、2滴垂らす方法です。仕事中にデスクに置いて集中力を高めたり、出張先のホテルで枕元に置いて安眠を促したりといった使い方ができます。バッグにしのばせておけば、外出先で気分を変えたくなったときに便利。バッグを開けるたびにふわっと香りが漂うのも素敵ですね。
また、精油のついた布を肌につけたり、目を拭いたりすることがないように十分ご注意ください。
洋服やマスクに貼りつけて使用するアロマシールも販売されています。さまざまな香りがあるので、気分に合わせて選ぶのも楽しそうですね。ほかにも、お好みの精油の香りをつけられるアロマネックレスやピアス、ピンバッチ、車内に吊り下げるカーディフューザーなどもありますよ。
自宅で過ごすとき
ディフューザーやスプレーを使い、精油の香りをお部屋に満たして楽しみましょう。リラックスや快眠、ストレスの軽減などが期待できます。ディフューザーには、水に精油を垂らして使うものや原液のボトルをセットして使用するもの、自然に香りが拡散するリードディフューザー、電気の力で香りを広げるタイプなど、さまざまな商品があります。お好みに合わせて選んでくださいね。
精油を湯船に垂らしたり、足湯に入れたりして体を温めると、血行促進や疲労回復、デトックス効果などが得られるかもしれません。なお、精油は水に溶けにくいので、バスソルトなどにつけてからお湯に溶かすといいでしょう。
喉の痛みや呼吸器系のトラブルがあるときは、洗面器やマグカップに熱めのお湯を注ぎ、その中に精油を数滴入れて蒸気を吸入してみましょう。
また、誤ってマグカップの中のお湯を飲まないように気をつけましょう。
なお、咳が出る方、喘息の方、小さなお子様はこの方法は避けてください。
精油が入ったお湯にタオルを浸し、よく絞ってから肩に当てると肩こりが、腰に当てると生理痛が緩和されるともいわれています。逆に、タオルを冷やしてから患部に当てると、捻挫や炎症の改善につながるそうです。
美容効果を期待して
血行促進や保湿効果を得たいときは、精油とキャリアオイルを混ぜて、顔や身体をマッサージしましょう。リンパの流れが良くなることが期待できますし、なにより香りに癒されそうですね。さらに知識を高めたら、オリジナルのクレンジングオイルやスキンローションなどを手作りすることも可能ですよ。
キャリアオイルに精油を混ぜて、精油の成分を体内に運ぶ(carrier)ため、この名前で呼ばれています。
キャリアオイル自体にもビタミンやポリフェノールなど、肌に有益な成分が含まれています。
一般的には、ホホバオイルやオリーブオイル、グレープシードオイルなどが選ばれることが多いようです。
精油の香りは7タイプ
アロマテラピーの香りは、フローラル系・シトラス系・ハーブ系・ウッディ系・オリエンタル系・スパイス系・樹脂系の7つに分けられます。それぞれに個性があるので、実際に香りを試しながら、お気に入りの精油を探してみませんか。
ここではそれぞれのタイプの代表的な香りについて、特徴や期待できる効果をまとめてご紹介します。精油選びの参考になさってくださいね。
フローラル系
ゼラニウム、ローズ、ジャスミン、ラベンダーなど、美しく咲く花をイメージさせるフローラル系は、優雅な雰囲気が特徴。甘く華やかな香りが漂います。リラックスタイムや気分を上げたいときに使ってみてはいかがでしょう。
中でも「香りの女王」と呼ばれるローズは、心を明るくし、神経の緊張やストレスを軽減してくれるといわれています。自律神経や女性ホルモンのバランスを整え、産後の精神状態や更年期の不調を落ち着かせる作用もあるようです。また、抗炎症作用があるとしてスキンケアにもよく取り入れられています。
ラベンダーはほとんどの精油と調和するため「万能精油」とされています。リラックス効果が高く、気持ちを安定させてくれるため、不眠に優れた効果を発揮するといわれます。ほかにも頭痛・肩こり・肌荒れ・日焼け・虫刺され・あせもなど、多くの症状を緩和する精油として重宝されています。
シトラス系
グレープフルーツやレモン、オレンジ・スイート、ベルガモットなどが代表的な柑橘系の香りです。広く多くの人に好まれ、明るく前向きになりたいときに背中を押してくれるといわれています。
レモンは柑橘系の中でもシャープな印象の香り。心身を活性化するとされているので、やる気や集中力を高めたいときにぴったりです。近年では認知症対策にも効果があるのではと期待されています。また、消化吸収の促進や胃粘膜保護に加え、老廃物の排出を助けるとされ、むくみや冷え性にも役立つといわれています。
爽やかなオレンジ・スイートの香りは、ストレスや緊張を緩和したいときに使ってみましょう。また、キャリアオイルで希釈してから腹部を時計回りにマッサージすると、消化不良や便秘に効果があるそうですよ。
スプレー容器に水100ml、セスキ炭酸ソーダを1g、オレンジスイートの精油を10〜20滴入れ、蓋をしてよく振ったら完成です。
使うたびに振って、汚れにスプレーしてから拭き取りましょう。
涼しい場所で保管し、できれば1週間以内に使い切ってくださいね。
なお、柑橘系の精油の中には、肌につけたまま太陽の光を浴びるとシミになったり炎症を起こしたりするものがあります。外出する予定がある場合や、外出先での使用は控えましょう。
ハーブ系
フェンネル、バジル、ローズマリー、セージ、タイムなど、お料理やお茶に使用することもあるハーブ。親しみやすく、爽やかな香りで、気分をリフレッシュするのに役立ちます。
ローズマリーは記憶力や集中力、注意力を向上させるといわれています。眠気もすっきりさせてくれるので、仕事や勉強のときに使うとよさそうですね。また、スキンケアや代謝の促進、コリや冷えの解消にもつながるとされているので、全身のマッサージにも使用しましょう。
タイムは抗ウィルス作用が比較的強いとされています。スプレーにして空間に噴霧したり、うがいに使ったりするのもおすすめです。ハーブティーにして飲めば、便秘や食欲不振の改善が期待できます。なお、高血圧の方や妊娠中の方、敏感肌の方は使用を控えた方がいいでしょう。
ニオイが気になるゴミ箱やトイレ、靴などにシュッとスプレーすると消臭できますよ。
ウッディ系
シダーウッド、ティーツリー、サイプレスなどの樹木の香りは、森林にいるような気分を味わわせてくれます。思わず深呼吸したくなる香りのものが多いですよ。
抗菌や抗炎症、免疫調整作用があるとされるティーツリーは、感染症対策のほか花粉症の時期にも役立ちます。鼻通りのいいすっきりとした香りは、リフレッシュしたいシーンや元気や活力を出したいときにも合いそうですね。
イライラした気分を静めたいときや不安を感じるときにおすすめなのはサイプレス。炎症や多汗を抑えたり、老廃物を排出しやすくしたり、気管支の不調にも作用するとされていて、幅広く使えそうです。
オリエンタル系
パチュリ、イランイラン、サンダルウッドなどは神秘的でエキゾチックな雰囲気。官能的で甘さも感じられます。心を静めたいときに嗅ぐとよさそうです。
イランイランは高級な香水にも使われます。温かみが感じられるので、緊張や不安、怒りといった気持ちを落ち着かせてくれるでしょう。また、ホルモンバランスを整える作用も期待できるので、PMSや更年期の症状があるときにも使ってみましょう。
ウッディーでエキゾチックな香りのサンダルウッドには、頭痛や神経の昂りを穏やかにする作用のほか、血流を良くする効果もあるのだとか。冷えやむくみを改善したい場合は、マッサージに取り入れてみましょう。また、ディフューザーなどで香りをお部屋に広げるとリラックスでき、安眠にもつながりるそうです。
スパイス系
ブラックペッパー、シナモン、クローブ、ジンジャー、カルダモンなどは刺激的なスパイス系。気持ちを切り替えたいときなどに選んでみましょう。
ブラックペッパーは物事に無関心、無感動になっているときに試してみたい香りです。普段の感覚を取り戻しやすくなるかもしれません。また、血行促進作用により、冷え性・肩こり・しもやけなどの緩和が期待できます。
シナモンはとても古くから使用されているスパイスのひとつです。強壮作用があるとされているので、疲れが溜まっているときに使ってみましょう。ほかにも胃痛・吐き気・消化不良・便秘などにも効果が期待できるようです。体を温める作用があるといわれているので、冷え性の方にもおすすめです。体だけでなく心が冷え込んでいるときにも役立つかもしれません。前向きで明るい気持ちにしてくれるそうです。
樹脂系
ミルラ、フランキンセンス、ベンゾインなどは木の樹脂から抽出したもの。重みが感じられる独特の甘い香りです。心を静めたいときにおすすめです。
スパイシーでウッディな香りのフランキンセンスは、乱れた心を静め、深い呼吸へ誘うとされています。落ち着きたい気分のときや、瞑想やヨガをするシーンで使ってみてはいかがでしょう。「若返りのオイル」とも呼ばれているので、乾燥や肌荒れといった皮膚トラブルの緩和や、エイジングケアにもおすすめの精油です。
ベンゾインはシナモンのようなスパイスを感じさせ、かつ甘い香り。咳や喉の痛み、気管支炎など呼吸器系に作用し、去痰や炎症を鎮める効果が期待できます。また、皮膚の再生も得意とすることから、切り傷やあかぎれなどの際にも用いるといいでしょう。
まとめ
アロマテラピーとは、植物から抽出した精油を使う自然療法です。ご自分に合う精油の種類や取り入れ方を知って、心身のトラブルの改善に役立てられるといいですね。注意事項を守って、安全に使用しましょう。
精油には大きく分けて7つの種類があります。お好みや期待できる効能に合わせて選び、ご自宅で、外出先で、香りを楽しみながら、精油を暮らしに活かしてくださいね。
- 精油の取り扱いは慎重に行う必要がある
- 精油には多くの種類があるので、心身の状態に合わせて選ぼう
- 手軽にできる方法から始めて、アロマテラピーを生活に取り入れよう