独立して花屋を開業したい!必要な準備とは?開業スタイル別にご紹介
記事の監修
【経歴】
某大手ファーストフードチェーン店 ショップマネージャー
IT企業 管理運営部 リーダー
2019年7月に福岡県福津市にて「FLORIST Classic Bouquet」創業。花屋歴17年 (2021年現在)。
小さい頃に「将来なりたい職業は何?」と聞かれて「お花屋さん!」と答えたことがある人は多いのではないでしょうか。花のある生活は癒されますし、きれいな花が並んでいる生花店へ行くと、気持ちが明るくなりリフレッシュできますね。生活に潤いを与える花に関わる仕事がしたくて、自分のライフスタイルに合った形で開業を志す人は増えています。
開業までには準備をしなければいけないことがたくさんありますし、それなりの心構えも必要です。それに開業資金を調達する方法や、開業後の収入も見越せないと独立に踏み切ることはできません。
そこで今回は、花屋として独立するために必要な準備から開業に至るまでの流れとその後の収入について、開業スタイルに合わせてご紹介します。
- 花屋にはどんな開業スタイルがあるか知りたい方
- 開業までに何をすればいいか情報が欲しい方
- 花屋を開業するにあたっての心構えを知りたい方
目次
3種類の開業スタイル
街を歩いていて「最近あまり花屋を見かけないな」と思われた方は少なくないでしょう。 実際、ほかの業種同様、店舗を設けて運営している生花店は減ってきています。 一方で従来のような店舗を持たずに、個人で花束やアレンジメントを販売しているフローリストは増えています。
しかし今は、フラワーアレンジメントの教室で、個人で花屋を開業するノウハウを学ぶための講座が開かれています。こういった講座に参加して、後々自ら開業するケースが増えています。
店舗を借りて人を雇って生花店を開くと、初期費用や運転資金はかなりの額になります。しかし自宅を少し改装して小規模なお店にすれば、費用は抑えられます。また実店舗は持たずにネットショップを運営することを選べば、多くの経費を削減でき、さらに開業へのハードルが低くなります。
それでは生花店を営む3種類のパターン、「店舗を借りて営業する」「自宅で開業する」「ネットショップを運営する」のそれぞれの特徴を詳しくご紹介します。
店舗を借りて営業する
一口に生花店といっても、明るい雰囲気の店内に所狭しとカラフルな花が並ぶ店があるかと思えば、パッと見ただけでは生花店とはわからないほど色味を抑え、スタイリッシュな作品が並ぶ店舗もあります。このように賃貸物件を借りて路面店を出す際は、内外装や品揃え、仕事の進め方などを自分の好きなように決められます。理想とする店を実現できるのが最大の魅力でしょう。
実店舗は人の目に留まりやすいというメリットもあります。店頭にたくさんの花やおしゃれなアレンジメントが並んでいると、店の前を通る人の目を引きます。開店しているだけで、お店のディスプレイが広告の役割を果たすのです。
駅に近い、人通りが多い、ターゲットにしたい客層が多く住んでいる、近くに生花店がないなど、大事にしたい点を吟味して場所を選びましょう。
「西向き」の店舗も検討しましたが、西日の店舗にしていたらロスがとても多かったと思います。
場所・物件選びは、今後のお店にとって重要になりますので慎重に進めましょう。
店舗を借りると開業資金・運転資金ともに多くかかりますが、うまくいけば大きく発展することが期待できる業態です。
自宅で開業する
開業資金を抑えるために、自宅の一部をリフォームして小規模な生花店を開くという方法があります。初期費用はある程度かかるものの、店舗の賃貸料を払う必要もなければ、更新費用も浮かすことができます。また金銭面だけでなく、店舗まで通う時間を省けるうえに比較的時間の融通が利くので、家事と仕事の両立がしやすいところもポイントです。
花を販売するだけでなく、アットホームな雰囲気を生かしてフラワーアレンジメントのレッスンをしたり、時折マルシェなどに出店したりするケースも多いです。お客様との接点が増え、売り上げアップにつながるでしょう。
また、近隣の方に迷惑をかけることがないか、よく検討しましょう。
ネットショップを運営する
一番開業資金を抑えることができるのが、ネットショップでアレンジメントなどを販売する方法です。無料でネットショップを開けるサイトに登録し、サンプル商品の画像や説明文を掲載することで販売が可能になります。有料のECサイトで販売する場合は毎月ある程度の出費が必要になりますが、その分多くのお客様に商品を見ていただけます。また独自にホームページも作って注文を受けている人も多いです。
ネットショップやホームページ上の商品がお客様の目に留まらなければ売り上げが伸びないため、絶えずサイトに手を加えたり、魅力的な商品を作り続けてSNSに画像をアップするなど、継続的な努力が必要になります。一方で、注文が立て込んできたらサイトでの注文受付を一旦ストップして、仕事量をセーブすることもできます。
ネットショップ運営は、あまり資金をかけずに自分のペースを守って仕事をしたい人にぴったりの方法です。
しかし、煩わしい支払い方法の設定や入金の確認、セキュリティ対策などはサイトの運営側がやってくれます。また全国のお客様に作品を見てもらう場を得られるのは、大きなプラス要因です。
開業までの準備は入念に
生花店は特別な資格がいらないため開きやすい一方、開業から2年後に継続して営業できているお店は20%程度しかないともいわれています。それでもさまざまな点を考慮し開業することを決めたら、どんなショップにしたいかを具体的にイメージして、開業までの綿密なスケジュールを立てましょう。
毎月ロイヤリティを支払う必要はありますが、生花店を経営するノウハウを学びながら仕事ができます。
それでは開店までのステップを順を追ってご紹介します。
コンセプトを設定し事業計画を立てる
継続して利益を出し続けられる店舗にするために重要なのは、独自のコンセプトです。どんな場所でどんな雰囲気のお店を開くのか、ターゲットの客層は、価格・品揃えはどうするのかなどを細かく設定し、事業計画を練りましょう。
事業計画書は、開業資金を調達するために、後に金融機関に提出する可能性が高いです。信用してもらえるようなしっかりとした内容のものを作る必要があります。
日本政策金融公庫はあらかじめ事業計画書の書式があり、ネットからダウンロードできます。金融機関によって、書式は異なるかもしれません。
※参考元:日本政策金融公庫 各種書式ダウンロード
いざ開業しても、大元のコンセプトがぶれて雰囲気が定まらないようなお店になってしまうと、リピーターのお客様がついてくれません。じっくり丁寧に検討を重ねましょう。
資金調達
独立開業にあたり自己資金だけでは十分でない場合は、日本政策金融公庫や民間の銀行・信用金庫などから融資を受けることが一般的です。日本政策金融公庫は民間の金融機関よりも審査基準が緩く、初めて開業する人でも融資を受けられる可能性が高いです。
ほかにも自治体の商工課が窓口となり、信用保証協会の保証を受けて民間の金融機関が融資をする「制度融資」があります。また自治体による助成金や補助金の活用、あるいはクラウドファンディングを利用する人もいます。自分にあった方法を検討してください。
ここからは具体的にどんなものに費用がかかるか、開業スタイル別にご紹介します。
路面店を開く場合
実店舗を出す場合、店舗取得費(前家賃・礼金・仲介手数料・保証金など)に毎月の家賃、内外装費用、花用の冷蔵庫、ディスプレイ用の棚、花の仕入れ代、資材費、車両を購入する費用や駐車場代などがかかります。従業員を雇う場合は、これに人件費も加わります。
また仕入れ先やお客様とのやりとり、ホームページの運営も必要ですので、インターネット環境を整えるための費用も必要です。これらを合わせて見積もりましょう。
ディスプレイ用の家具は、お店の雰囲気に合わせて色を塗り替えるなど一手間加えると、中古品であっても見違えるようになるでしょう。
自宅で開業する場合
一般的な戸建て住宅の場合、お客様を迎えやすいように入口や駐車場の整備、床を防水の素材に変えるといったリフォームが必要になります。また花を置く台やショーケース、保管用の冷蔵庫、花やラッピング用の資材などの購入費が必要です。
それでも店舗の賃貸料を支払いながら営業するよりはずっと経費が抑えられますし、路面店同様好きなようにお店をアレンジできるというメリットもあります。
子ども用の椅子などをディスプレイに使うと、費用が抑えられるだけでなく温かみのある雰囲気が作れます。
ネットショップで販売する場合
ネットショップで仕事をする場合は、物件の賃貸料や更新料がかからないうえに、電気代、什器備品などの費用もかなり抑えられます。また欲しい花をいつでも仕入れられるように取引先を確保しておけば、個人で花の在庫を抱える必要がなく、コストをカットできます。
削減できた費用は、作品撮影用のカメラや画像加工のためのパソコンの購入、あるいはホームページ制作費に回してはいかがでしょう。ネットショップに登録するだけでなく独自にホームページを制作する場合は、専門の業者に依頼することが多いです。費用には幅があり、30万円程度で済むこともあれば100万円を超えることもあります。
ホームページ作成の知識がある人は、手間と時間がかなりかかりますが、自分で作ることも検討しましょう。専門業者に支払う費用が抑えられますし、自分の気に入ったデザインで作れます。
お店の内外装工事
お店を借りる場合も自宅を改装する場合も、店舗のデザインはお客様を引き寄せる最も大きな要因のひとつです。作り出す作品の雰囲気やオーナーの好きなテイストが感じ取れ、他店との違いを印象付けるようなデザインにしましょう。
また働く人の動線やお客様が見やすいディスプレイを考えることも大事です。営業を始めてから手を入れるのは難しいですから、最初にしっかりとデザインして、納得のいく造りにしてください。
仕入れ先との契約
花を仕入れるには、花市場を利用する方法と仲卸業者から仕入れる方法があります。花市場で仕入れるためには保証金(20万円ほど)が必要となります。加えて実務経験や年間売り上げ見込み額が設定されていて審査があるため、新規参入する人にとってはハードルが高いといえます。また購入は箱単位となるため、個人の生花店で売り捌くには量が多すぎるかもしれません。
このため小規模な生花店の場合は、10本単位で購入可能な仲卸業者から仕入れるケースが多いようです。お客様の目線で考えても、店頭に同じ花ばかり大量にあるよりは、種類の異なる花がたくさんあった方が選択肢が増えますし、なにより見栄えがします。また花業界の先輩である仲卸業者の方から花についての知識を教えてもらえることもあるので、こちらの方がメリットが大きいでしょう。
取引先の開拓や仕入れ額・量の交渉など、手間や時間はかかりますが、検討する価値はあるでしょう。
宣伝広告していよいよオープン
SNSは費用をかけずに広く宣伝できる便利なツールです。開業に向けた準備の様子を載せるなど、できるだけ早い段階から発信し続けると、新しく生花店がオープンすることを多くの人に知ってもらえるでしょう。花は見栄えがするのでSNSとの相性がいいです。できれば1日に何度も画像をアップして、認知度を高めていくことをおすすめします。
実店舗の場合は、近所に何度かチラシを配ったり、知り合いに声を掛けたり、来店プレゼントを用意するなどして、オープン当日は人の出入りが多くなるようにしておきましょう。通りかかった人の印象に残り、後日来店してくれるかもしれません。
ネットショップについても、SNSで「販売スタートまで、あと◯日!」など繰り返し投稿すると、オープン前からファンがついてくれる可能性があります。時間はかかりますが、地道にフォロワーを増やしていくことが成功への近道です。
開業後の収入
長年の夢である独立開業ですから、やるからには成功させたいと誰もが思っているはず。ですが、生花店の経営は販売形態や立地条件によって大きく変わります。年商だけで見れば十分にあっても、家賃の高い場所に店舗を構えれば運営資金がかかります。また、いくつも支店を出したり、冠婚葬祭の企業と提携して年間数千万円の利益を上げているところもある一方、残念ながら短期間で廃業となるケースもあります。
一般的に個人経営の生花店では、うまくいけば月に20~30万円ほどの収益は望めるとされています。とはいえ、これはいい方の数値で、軌道に乗った状態の金額です。独立直後、なかなかうまく経営ができていない場合には、利益を上げることが難しいケースもあります。それでも、せっかくショップを持てたのなら、長く事業を続けられるようにできることから少しずつ改善していくことが重要でしょう。
もしそうなっても、すぐに生活が立ち行かなくなることがないよう、開業する前は最低限半年分の生活費を確保しておくことをおすすめします。
生花店を運営するのに必要な知識
優雅な仕事に見える花屋ですが、内情はかなり大変な仕事です。花は生き物ですし、天候などによって品質が変わります。値段の変動も激しいです。そのため仕入れの数量や価格設定を誤ると、赤字になってしまう可能性があります。そうならないように状況や消費者の動向を見極める力をつけることが必要です。
また弱った花は売り物になりませんから、新鮮な状態を保つための方法もきちんと勉強しておかなければいけません。作品やラッピングのデザイン力や、SNSで魅力的な発信をするための撮影・画像の加工・文章の力を上げることもポイント。あらゆる状況に素早くきちんと対応できるよう、開業後もアンテナを張って学び続けることが大事です。
まとめ
生花店を営むことは体力的にも精神的にも楽ではありません。ですが自分のセンスがものをいう、やりがいのある仕事です。花屋を開くことを決めたら、理想の店を実現できるよう、開業前の準備をじっくり進めましょう。
開業する際に避けては通れない資金面については、必要であれば税理士などプロに相談して、無理のない計画を立てましょう。しっかりと準備が整ったら、夢の生花店経営をスタートさせてくださいね。
- 生花店の開業には、店舗を借りるほかに自宅を改装して営業する方法や、ネットショップで販売する方法がある
- 独立開業する前に事業計画をしっかり練っておく必要がある
- 開業後も学ぶことや改良することを怠らず、一日も早く事業を軌道に乗せよう
記事の監修
【経歴】
某大手ファーストフードチェーン店 ショップマネージャー
IT企業 管理運営部 リーダー
2019年7月に福岡県福津市にて「FLORIST Classic Bouquet」創業。花屋歴17年 (2021年現在)。