生花を長持ちさせる方法を現役フローリストが解説。自分でもできるその方法とは?
記事の監修
綺麗に咲く生花をより長い期間お部屋に飾るためには、どんなことに気を付けたら良いかご存知ですか?せっかくなので、できるだけ長く花を楽しみたいと思われる方も多いですよね。そこで今回は、生花を長持ちさせる方法をご紹介します。
生花を飾る前のお手入れや、ちょっとした習慣を加えることで、花を長い間綺麗に保つことができますよ。いくつかの方法をご紹介しますので、ご自身で取り入れやすい方法を選択してみてくださいね。
- 花を飾るのが好きな方
- 花を長持ちさせる方法を知りたい方
- 花についての知識を増やしたい方
目次
切り花の水揚げ方法
花を長持ちさせるためには、まず花のメカニズムを知っておくことが大切です。花などの植物には、「維管束」と呼ばれる組織があります。維管束の中には、根から吸収した栄養や水分が通る「道管」と、葉が作った栄養が通る「師管」があります。植物はこれらの器官で栄養や水分を運ぶ事により、鮮度を保っているのです。
切り花の場合、自然な状態とは異なり水を吸い上げる力が弱くなっています。ここで必要になってくるのが水揚げです。水揚げとは、水を吸い上げる力を引き出す手法のことをいいます。清潔な水が道管を通して花全体に行き渡る事により、花もイキイキと長持ちしてくれますよ。
水揚げの種類
水揚げにはいくつかの方法があります。花にたくさんの種類があるように、水揚げにもそれぞれに適した方法があるため、花に合った方法を選ぶことが大切です。ここでは、代表的な水揚げ方法をご紹介していきます。花のお手入れの基本になるので覚えておきましょう。
①水切り
水切りはもっともポピュラーで簡単な方法になります。綺麗な水の中でハサミを使って斜めにカットする方法です。
- 切り花
- バケツなどの容器
- ハサミ
- 水
水切りの手順
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STEP. 1
容器に水をためる
まずはバケツなどの容器にたっぷりと水をためていきましょう。
茎がしっかりとつかるくらいの量が必要です。
水の温度も重要です。水温が低すぎると水は上がりにくくなります。
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STEP. 2
茎の先端を水の中に入れる
水切りは「ためた水の中」で行うことが重要です。これは、浸透圧を使って茎の中に水を入れていくためです。
茎が水に触れていれば良いというわけではないので、流水では効果がありません。
蛇口の水にあてながら…というのは効果がないので注意しましょう。
しっかりと容器の中に水をためて行うようにしてください。
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STEP. 3
水中で茎をカットする
水中に茎の先端を入れたら、先端から数センチのところを斜めにカットしていきます。
斜めにカットする事により、断面積が広がりそれだけ水の吸収がよくなります。
道管を潰してしまう恐れがあるため、水平にカットすることは避けましょう。
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STEP. 4
完成
先端をカットした30分〜1時間ほど花をバケツに入れて水をたっぷりと吸収させておきましょう。
特にかすみ草のような細かな花がたくさんついている細い枝物や、ナンテンのような実のついている花は、水温が低すぎる水を使うと、葉などが落ちやすくなってしまうので注意しましょう。
こちらの動画で、水切りの手順をご紹介しています。実際に行う際に参考にしてみてください。
②水折り
水折りとは、ハサミを使わずに手で茎を折る方法です。カーネーションや、キク科やリンドウ科などの花に向いている方法だと言われています。
- 切り花
- バケツなどの容器
- 水
水折りの手順
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STEP. 1
容器に水をためる
こちらも、上で説明した水切りと同様、容器の中に水をためておきます。
水折りの場合は、両手が入る大きさの容器を用意しましょう。ボウルや洗面器などがおすすめです。
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STEP. 2
水中で茎の先端を折る
水の中に茎を入れ、茎の先端から約5cmのところで折っていきます。
親指の爪を茎に当て、一気に折るとうまくいきます。
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STEP. 3
完成
茎が折れたら2秒以上そのままの水の中に浸しておきましょう。
茎の断面がボサボサの状態で、ささくれができていたら成功です。
見栄えはよくありませんが、このささくれができている状態になることで水を吸い上げる表面積が広がり、花にとっては良い状態となります。
③湯揚げ
一般的にはあまり馴染みのない「湯揚げ」。実は、花屋さんではよく使われている水揚げ方法です。お湯を使用する方法で、マーガレットやひまわり、バラなどの花に適していると言われています。蕾のかたい花を早く咲かせたい時にも効果的な方法ですよ。
- 切り花
- 新聞紙
- バケツなどの容器
- ハサミ
- お湯
- 水を入れた深さのある容器
湯揚げの手順
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STEP. 1
新聞紙で花を包み、茎をカットする
お湯の蒸気が花に当たらないように、新聞紙で花を包んでいきます。この時、茎の余分な葉も取っておきましょう。
茎の先端は新聞紙から出した状態にしておきます。
新聞紙で花を包んだら、茎の先端を2cm程斜めにカットしていきます。
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STEP. 2
茎をお湯に浸す
まず、容器にお湯をためます。お湯の温度はポットのお湯程度の温度でOKですが、より温度が高い方が効果的です。
お湯の用意ができたら、そこに茎を浸していきます。10秒から20秒ほど浸し、鮮やかな色に変わっていたら取り出します。
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STEP. 3
たっぷりの水に浸す
花首あたりまで浸かるくらいのたっぷりの深い水を用意しておきます。
そこに新聞紙に包んだ状態のまま、すぐに花を浸していきます。
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STEP. 4
完成
1時間〜2時間ほど水の中におき、茎がしっかりとしてきたら水揚げの完了です。
こちらの動画で湯揚げの仕方が紹介されています。参考にしてみてください。
④たたく方法
この方法は、主に茎の硬い枝ものに使います。茎が木のように硬いと、先に説明した水折りなども難しくなります。そのような時には、道具を使用することで簡単に水揚げをすることができますよ。ライラックや雪柳は、たたく水揚げ方法がおすすめです。
- 切り花
- ハンマーや金槌など
たたく時の手順
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STEP. 1
平らな場所に植物をおく
たたく水揚げ方法の時には、石やコンクリートなど硬くて平らな場所で行うことが重要です。
足台にしているブロックなどに直接植物を置いてたたくと、ブロックごと割れてしまう場合もあるので注意しましょう。レンガなどを使うのがおすすめです。
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STEP. 2
ハンマーでたたく
植物を硬く平らな場所に置いたら、ハンマーや金槌を使って茎や枝の先端を叩いていきます。
茎や枝の繊維を壊すことで道管が剥き出しになり、断面積が増えて水の吸い上げがよくなります。
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STEP. 3
完成
⑤割る方法
さくらや梅、桃、ツツジや紫陽花といった枝ものの水揚げには、割る方法が最適です。この方法は、「根元割り」とも言われています。硬い茎や枝を持つ花は水の吸水が悪いため、ハサミで切り込みを入れて水揚げを行います。
- 切り花
- ハサミ
割る時の手順
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STEP. 1
茎の先端をカットする
茎や枝の先端を、ハサミで斜めにカットします。
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STEP. 2
十字にカットする
茎や枝の縦方向にハサミを入れ、先端から数cmの長さで十字にカットしていきます。
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STEP. 4
完成
⑥焼き揚げ
焼き揚げは、湯揚げと同様の物理的効果を利用した水揚げ方法になります。数ある水揚げ方法の中でも、もっとも難しい方法だと言われています。焼き揚げには、バクテリアを死滅させる殺菌効果と、道管の中の空気を逃がして水の吸収力を高めるといった効果があります。
- 切り花
- 新聞紙
- 水を入れた深い容器
- ガス台など
焼き上げの手順
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STEP. 1
新聞紙で花を巻く
まずは、湯揚げの時と同様に、茎の部分を新聞紙で巻いていきます。
この時、花や葉に熱が伝わらないように濡らした新聞紙を使い、花や葉を保護しておきましょう。
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STEP. 2
茎の先端を火であぶる
火で茎の根本あたりを炭の状態になるまであぶっていきます。
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STEP. 3
水に浸す
茎部分が、炭のように黒くなったら、用意しておいた水の入った深い容器に入れ、1時間〜半日ほど冷ましておきます。
この時、茎の半分以上を水に浸しておくことが大切です。
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STEP. 4
完成
清潔を保って長持ち
花を長持ちさせるためには、先に説明している「水揚げ」も重要ですが、「清潔」を保つことも重要だと言われています。一見難しい作業のようにも感じますが、花瓶を清潔に保ったり、こまめな水替えをするなど、日々の暮らしの中でできることばかりなので覚えておきましょう。
せっかく綺麗に咲いている花でも、手入れを怠ってしまうとすぐに枯れてしまいます。日々のちょっとしたお手入れ次第で、部屋の中でも花を長く楽しむことができますよ。具体的にどんなことをすれば良いのかを詳しくご紹介しますので、切り花を生ける時には参考にしてみてくださいね。
花瓶を洗う
まず花を生ける時には、花瓶を綺麗に洗浄してから使用するようにしましょう。切り花は雑菌にとても弱いと言われています。花瓶内の水に雑菌が繁殖してしまうと、茎の中にある水を吸い上げる道管が詰まってしまい、花が萎れてしまいます。
花瓶も清潔な状態にした上で使用するようにしましょう。
花切りバサミも清潔に
切り花を生ける上で、花切りハサミは必須アイテムです。水揚げの際にも使用することが多いので、一つ自宅にあると便利ですよね。茎や枝は普通のハサミでは硬くて切ることができません。花専用のハサミを用意しておきましょう。
花切りハサミも花瓶と同様に、清潔を保つことが重要です。汚れたハサミを使用すると切り口から雑菌が侵入してしまうので、使い終わったらしっかり洗浄して、いつでも綺麗な状態で使えるようにしておきましょう。
こまめな水替え
花を生けた後のこまめなお手入れも忘れてはいけません。花は綺麗な水を好むので、毎日の水替えを心がけるようにしましょう。仕事や家事で忙しく毎日の水替えは難しい・・という方も、2日に1回は水替えをできる環境を整えることをおすすめします。
また、水替えの際に茎のぬめりなどが気になる場合は、雑菌の繁殖原因となるのでついでに洗い取っておきましょう。
余分な葉やつぼみを落とす
葉が水に浸かると、腐敗して水が汚れてしまう原因となります。花瓶の中の水に浸かる部分についている葉は、あらかじめ取り除いておくようにしておきましょう。この一手間が、花の長持ちにも影響します。また、葉が多すぎたり、蕾がたくさんついている花の場合は、生ける段階で少し落としておくと良いでしょう。葉が多すぎると、葉から出ていく水分が増えて、早く花が萎れてしまう原因となります。
また、蕾も同様にたくさんついていると栄養分が取られてしまい、栄養不足で花が咲かなくなってしまう原因となります。蕾や葉は残しておきたい気持ちにもなりますが、全体的なバランスを見ながら調整していきましょう。
花を長持ちさせるために必要な栄養剤
切り花を長持ちさせる方法の一つに、「花の栄養剤」があります。花屋さんやホームセンターで購入することができますが、使い方がよくわからないという方も多いのではないでしょうか?花は切った瞬間から、栄養素が入ってくる場所がなくなってしまいます。
そこで花に必要な栄養を補い、花が枯れないような働きをしてくれるのが、「花の栄養剤」や「延命剤」と言われるものになります。ここでは花の栄養剤の使い方をご紹介していきます。花が長く、イキイキと咲くために必要なものが色々と入っているので、ぜひ活用してみてくださいね。
花の栄養剤とは
植物が花を咲かせるためには、エネルギーとして糖を消費しています。しかし、水をあげているだけではエネルギーがなくなってしまうこともあります。そんな時に活躍するのが花の栄養剤です。栄養剤には、花の栄養になる糖分や水中での雑菌の繁殖を抑えてくれる抗菌剤も含まれています。花を長持ちさせてくれるだけでなく、水替えなどの管理の手間も軽減してくれる便利なアイテムですよ。
栄養剤は花屋さんやホームセンターなどで手軽に購入することができます。大きく分けると、液体タイプと粉末タイプの2種類があります。液体タイプの方が馴染みがありますが、あまり花を飾る習慣がないという方は、少量ずつ個包装されているような粉末タイプを使うのがおすすめです。
また、ハイターなどの漂白剤や、サイダーのような炭酸飲料でも栄養剤の代用ができると言われています。購入が難しい場合には、これらで代用するのもいいですね。
仏花として生ける場合には特に注意が必要です。心配であれば、仏花専用の栄養剤を使用してくださいね。
使い方
栄養剤の使い方は、栄養剤を花瓶の水に混ぜるだけというシンプルな手順になります。花の栄養剤は使い方を間違ってしまうと逆効果になってしまう場合もあります。栄養剤のパッケージに記載されている「希釈倍率」をしっかりと守り使用するようにしましょう。栄養剤は濃度が濃ければ効果も高くなるというわけではありません。正しい量を使い、花を長く楽しみましょう。
また、代用品のハイターや炭酸飲料を使用する場合も、誤った代用の仕方をすると逆に花を傷めてしまう可能性もあるため、使う際には注意が必要です。
花が長持ちする環境
花を生ける準備が整ったら、花が長持ちする環境も整えていきましょう。花の咲く期間は、花をどこに飾るのかでも変わってきます。例えば、直射日光や空調の風が直接当たる場所に花を飾った場合、水分が失われやすく乾燥しやすくなってしまいます。なるべく直射日光の当たる場所は避けるようにしましょう。また、どうしても直射日光があたてしまう場合には、レースカーテンなどを使い遮光するようにしてください。
できるだけ涼しい場所に飾ることもポイントです。気温が高い場所に花を飾ると、植物の老化が早まってしまいます。また、花瓶内の水に雑菌が繁殖しやすくなる為、花が綺麗に咲く期間も短くなってしまうので注意しましょう。
- 直射日光の当たらない場所
- 風通しの良い場所
- できるだけ涼しい場所
まとめ
今回は、花を長く楽しむための方法をご紹介しました。花を生ける前に水揚げをしてたっぷりの水分を補給し、花の環境を整えておくことで、格段に花の咲く期間を長くさせることができます。花は命ある生き物です。人間と同じように呼吸して育っています。
花を長く咲かせるためには、水替えや花瓶を洗い清潔に保つなど、毎日の暮らしの中で花と向き合う時間を少しでも作ることが大切になります。花のある暮らしを楽しみながら、毎日の花の変化を観察しつつお手入れしていきましょう。
- 花を長く楽しむためには「水揚げ」が大切
- 花の栄養剤を使用する場合には、「希釈倍率」に注意しましょう
- こまめな水替えは花を長く楽しむためには必須。清潔な環境を整えることが大切
記事の監修
大手生花店での勤務・パリでの修業を経て、UTSUWA FLOWERのストアマネージャーに就任。
大手アパレルの展示会装飾なども手掛ける。