簡単なのに美味しい!輸入牛肉を柔らかくする方法とは?
記事の監修
岩川 祥子
管理栄養士・サプリメントアドバイザー
管理栄養士、サプリメントアドバイザー。
その他、ファスティングインストラクター、美肌食マイスターなど、「食」について数多くの資格を持つ。
ローフードマイスター名古屋守山東校を開校後、セミナー講師や食事指導を行いながら、専門家として多くの記事やコラムを監修。
日々、臨床現場での食事指導を続けながらも、イベント出演や料理教室を精力的に行うなど、活動は多岐に渡る。
Instagramやブログなどでは女性の健康をサポートする情報を発信している。
お家でステーキを焼いたら硬くなってしまった…という経験はありませんか?特にサシの多い和牛と比べると、赤身の輸入牛肉は硬くなることが多いかもしれません。ですが、下処理や焼き方を工夫することで、一般家庭の調理でも輸入牛肉が柔らかくなり美味しく食べられるのです。
そこで今回は、輸入牛肉を柔らかくする方法について解説していきます。肉を加熱すると硬くなってしまう理由を知り、柔らかく焼くためのコツをおさえていきましょう。リーズナブルな輸入牛肉でも、絶品のステーキに仕上げることは可能です。ぜひ柔らかくする方法をマスターして、美味しいお肉を楽しみましょう。
- ステーキを美味しく焼きたい方
- 肉を焼くといつも硬くなってしまうという方
- 輸入牛肉を簡単に柔らかくする方法を知りたい方
目次
輸入牛肉が硬く感じる理由
輸入牛肉を和牛(特に黒毛和牛)と比較すると、サシ(細かい脂身、霜降り)が入っていません。サシの入った牛肉は柔らかくて美味しいといわれますね。ですが、輸入牛肉が硬くなってしまうのは、サシがないことだけが原因ではありません。まずは、硬くなる理由を知っておくことが大切です。
特に、サシのない輸入牛肉は、部位によって肉質がかなり違います。繊維質(スジ)の多い部位は、加熱すると硬くなりがちです。さらに、加熱の仕方も硬くなる原因の一つです。
- 部位の選び方(スジの多い部位ほど硬い)
- 焼き方
この2つの理由について、もう少し詳しく見ていきましょう。
繊維質が多い
牛肉は部位によって肉質が異なるとお伝えしましたが、運動量の多い部位ほど筋っぽく硬く、逆に運動量の少ない部位ほど柔らかいです。具体的には、肩や首、スネは荒い肉質のため硬く、サーロインやヒレはキメが細かくて柔らかい肉質といわれています(モモ肉には、硬い部位と柔らかい部位があります)。購入時に、柔らかい部位を選んでおくというのも一つの方法です。
ただし、サーロインやヒレは輸入牛肉のなかでも比較的高価なため、安いお肉を美味しく食べたい場合は手が出にくいかもしれませんね。繊維質の多い肉でも柔らかく美味しく焼き上げるには、下処理を行いましょう。具体的な方法は、後ほどご紹介します。
焼き方の問題
肉が硬くなってしまうもう一つの理由は、加熱により水分(肉汁)が流出してしまうことです。肉を加熱するとたんぱく質が縮み、それと同時に肉汁が流出します。ほどよい加熱なら肉汁は閉じ込められたままですが、加熱し過ぎると水分がどんどん出ていきパサパサになってしまうのです。
焼いた輸入牛肉がパサパサの硬い食感なのは、だいたい焼き過ぎてしまっているから。豚肉や鶏肉と違って、牛肉は鮮度のよいものなら中心部がレアでも食べられます。ステーキや焼肉などを焼く際は、肉汁が流出しないよう、ほどよい焼き加減で止めるようにしましょう。
焼き方に加えて、焼く前の温度管理などいくつか工夫したい点があります。
肉汁を流出させないようにする焼き方や温度管理については、後ほど詳しくご紹介します。まずは、柔らかくするための下処理から見ていきましょう。
簡単に輸入牛肉を柔らかくする方法~下処理編~
ステーキ用など厚みのある輸入牛肉の場合は、柔らかいといわれる部位でも筋っぽく感じるかもしれません。そこで、少しでも柔らかい食感に変えるために、下処理によって筋っぽさを改善していきましょう。ここからは、一般的によく行われる「筋切り」をはじめ、漬け込むことで繊維を破壊したりやわらげたりする方法をご紹介していきます。
- 筋切りでスジっぽさをなくす
- たんぱく質分解酵素を利用して肉の繊維を破壊
- 牛肉のph域を調整して筋肉組織をほどき、保水性を高める
筋切りをする
輸入牛肉にはサシが少なく、筋がしっかり入っているものが多いです。この肉の筋繊維を細かく切る作業を筋切りといいます。厚切り肉の場合、何もしない状態で焼くと繊維質が縮んで硬くなり筋っぽい食感になってしまいますが、あらかじめ細かく切っておけば筋が気にならなくなるのです。
食感のよさだけでなく、見た目もきれいなステーキに仕上げることができますよ。
筋切りには、包丁で細かく筋をカットしていく方法や、フォークで全体を刺す方法があります。フォークで細かく筋切りをすると柔らかくなりやすいですが、比較的肉汁が流出しやすいという面も。ここでは、一般的な包丁を使った方法をご紹介します。
牛肉の基本の筋切りの手順
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STEP. 1
牛肉を広げてまな板に置く
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STEP. 2
赤身と脂身の境目に細かく包丁を入れていく
2cmほどの間隔を目安に入れるのがポイント。細かすぎると肉汁が出やすくなってしまいます。
筋を断ち切るように、繊維に対して直角に包丁を入れましょう。
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STEP. 3
完成
肉全体に包丁を格子状に入れていく方法もあります。この場合は、深く切り込みを入れると肉がバラバラになってしまうため、厚みの半分程度を目安に入れるようにしましょう。
肉との接触部分に金属製の細かい突起があるため、全体を叩くだけで筋繊維を簡単に断ち切ることができます。
あまり強く叩くと肉が潰れてしまいますので、力を入れ過ぎないようにしましょう。
たんぱく質分解酵素を含む食品に漬け込む
肉や魚に含まれる筋原線維たんぱく質は、酵素の働きにより分解させることができます。そのため、たんぱく質分解酵素であるプロテアーゼを含む食品に輸入牛肉を漬け込んでから調理するのも効果的。酵素により筋繊維が破壊され筋っぽさがなくなり、柔らかい食感にすることができますよ。
ただし、この方法では下味がついてしまいますので、ステーキ肉よりも焼肉用や切り落としの輸入牛肉におすすめです。
- パイナップル
- 生姜
- キウイフルーツ
- 玉ねぎ
- 舞茸
- 塩麹(※非加熱処理のもの)
上記のような食品のすりおろしやみじん切り、しぼり汁などに輸入牛肉を漬け込んでおくことで、プロテアーゼが作用し肉が柔らかくなる効果が期待できます(塩麹の場合は表面にすり込めばOK)。漬け込み時間は肉の厚さにもよりますが、1~2時間程度を目安にしましょう。空気に触れると味が落ちてしまうため、密封できる保存袋か密閉容器、ラップなどを利用して、冷蔵庫に入れてくださいね。
参考元:国立がんセンター東病院「調理のポイント 食材をやわらかくする工夫」
宝酒造株式会社「魚、肉の食感」
アルコールやマリネ液に漬け込む
漬け込む下処理でもう一つ効果的なのが、肉の保水性を高める食品の活用です。肉の水素イオン濃度はph5.6~6.0付近といわれていますが、ph5付近という数値はたんぱく質間の距離が近く緻密な構造なうえ、保水性も最小な状態。このまま焼くと、たんぱく質同士がギュッと結合しやすく肉汁も追い出されてしまうのです。
そこで、肉のph域を変化させるために、アルカリ性または酸性の食品に漬け込んでから焼く方法が効果的です。ワインや日本酒、またマリネ液に漬け込めば肉のph値が低くなり酸性側に変化します。逆にアルカリ性に変化させたい場合は重曹を使うといいでしょう。
たんぱく質間の距離も緩み、肉汁が出にくくなるため焼いたときに柔らかくなります。
参考元:北海道食文化研究会「肉のかたさを 科学的に考えてみよう!」
宝酒造株式会社「魚、肉の食感」
漬け込む方法の注意点
輸入牛肉を柔らかくする方法として、プロテアーゼを含む食品や酸性またはアルカリ性の食品に漬け込んでから焼くというものをご紹介しました。焼肉や炒め料理に使う場合にはぜひお試しください。ただし、これらの漬け込む方法には気を付けたい点もあるため、実践する前におさえておきましょう。
まず、これらの方法はあくまでも安価な輸入牛肉を美味しく食べるためのものです。高級なお肉で行うと、せっかくの風味が損なわれてしまうかもしれません。上質なお肉はそのまま焼いても美味しいものがほとんどですので、筋っぽい輸入牛肉の場合に限り行いましょう。
また、漬け込んだまま長時間放置すると風味が損なわれるだけでなく、柔らかくなり過ぎて肉がボロボロになってしまう場合も。薄切り肉の場合は短時間でも浸透しやすいです。漬け時間は1~2時間を目安に、長くても3~4時間程度に留めておきましょう。
一般的なワインなら肉の重量の15%程度の量を目安にするといいでしょう。
ここまでは、輸入牛肉を柔らかくするための下処理についてご紹介してきました。ですが、下処理だけを完璧に行えばOKというわけではありません。焼き方がうまくいかないと、いくら下処理をしたお肉でも硬くなってしまいます。特に、ステーキなど下処理が筋切りのみの場合は、焼き方がとても重要。柔らかくするための焼き方のコツをしっかりおさえていきましょう。
簡単に輸入牛肉を柔らかくする方法~焼き方編~
輸入牛肉を柔らかく焼き上げるには、とにかく「水分(肉汁)の流出を防ぐこと」を徹底しましょう。牛肉に限らず、どの肉も急激な温度変化を防ぎ、焼き過ぎないようにすることが大切です。焼く際の火加減はもちろんですが、焼く前の温度管理も仕上がりに関わってきます。また、味付けのタイミングも水分流出に影響します。
- 急激な温度変化を防ぐ(焼く前の温度管理)
- 味付けのタイミング
- 焼き過ぎないようにする(余熱の利用)
上記のポイントを踏まえ、それぞれの具体的な方法について見ていきましょう。
温度管理
冷たい肉を急に熱々の鉄板に置くような焼き方をすると、肉の温度が急激に変化してたんぱく質の収縮と水分の流出が促されてしまいます。また、冷えた肉は火が通りにくいため、加熱時間が長引く原因にもなります。そのため、特にステーキのような厚切り肉を調理する際は、焼く直前ではなく30分~1時間ほど前に冷蔵庫から出して常温に戻しておきましょう。
特に室温の高い時期は肉が傷む原因になりますので、常温で長時間放置することは絶対に避けましょう。
また、温度管理に関しては購入時からも注意が必要です。肉を購入したら、できるだけ速やかに冷蔵庫のチルド室に入れて保管しましょう。温度が高くなると表面から水分が流出しやすくなり、鮮度も落ちてしまいます。調理する30分~1時間前までは低温で管理してくださいね。
ふり塩のタイミング
牛肉のステーキを焼く前に、塩こしょうで味付けするという方もいらっしゃるかもしれません。塩をふることで肉がほどよく締まり、旨みも引き出されます。特に、リーズナブルな輸入牛肉にふり塩を行うと、臭みも取れて美味しくなりますよ。ですが、あまり早い段階でふり塩を行うと、水分の流出量が増え旨みも逃げてしまうため注意が必要です。
水分の流出量をできるだけ抑えるためにも、ふり塩は肉を焼く直前に行うのがベスト。輸入牛肉100gに対し1g程度を目安に塩をふったら、すぐに焼きましょう。
一方、黒毛和牛など高級なお肉の場合は臭みもないため、焼いてから味付けするのがおすすめです。
強火で短時間加熱し、余熱で中心まで火を通す
焼き加減に関しては、加熱し過ぎないようにすることが最重要ポイントです。輸入牛肉でも鮮度がよければ中心部までしっかりと火を通さなくても食べられます。表面は強火でしっかりと焼き色をつけ、中心部は余熱で火を通せば十分です。厚い肉の場合は火を通すために加熱時間が長くなりがちですが、余熱を上手に使えばほどよく火が通り、柔らかく仕上がりますよ。
効率的に余熱で火が通り、肉汁の流出を防ぐこともできるおすすめの方法です。
薄切り肉の場合も、加熱し過ぎるとパサパサになってしまいます。肉じゃがなどの煮物に使う場合は最後に加える、炒め合わせでは先に炒めたら一旦取り出しておくなど、加熱が長引かないよう工夫するといいでしょう。
美味しいステーキの焼き方
これまでご紹介してきた下処理と焼き方のコツを踏まえて、輸入牛肉ステーキを美味しく焼く方法をまとめました。お家でステーキを柔らかく焼き上げたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
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STEP. 1
牛肉を冷蔵庫から取り出して常温に戻し、筋切りをしておく
焼く30分~1時間前に出しましょう。
30分ほど出したら筋切りを始めると、ちょうどいい戻し具合になります。
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STEP. 2
塩こしょうをふる
焼く直前にふり塩をすることで、水分の流出が防げます。
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STEP. 3
表面(両面)を強火で焼く
フライパンに油(またはバターか牛脂)をひき、強火で肉の表面を1分程度サッと焼きます。
片面に焼き色がついたら速やかに裏返し、もう片面も同様に焼きましょう。
肉が分厚い場合は、弱火に落としてさらに3分くらい焼くとほどよい焼き加減になります。
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STEP. 4
アルミホイルで包み余熱で火を通す
両面がこんがりと焼けたら、肉を取り出してアルミホイルで隙間なく包みましょう。
こうすることで余熱で中心部まで火が通り、ほどよい焼き加減になります。
肉汁が落ち着き、流出しにくくする効果も得られます。
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STEP. 5
完成
下記の動画では、ステーキの美味しい焼き方をご紹介しています。参考にしてみてください。
煮込み料理には圧力鍋の使用がおすすめ
スネ肉やモモ肉など硬い部位のブロック肉は、煮込み料理に使うと美味しいといわれます。これは、長時間加熱し続けることで結合組織のコラーゲンがゼラチン化し、筋繊維がほぐれて柔らかくなるからです。豚の角煮や牛タンシチューなども、同様の原理を生かした料理ですね。一般的には、下茹でした肉をさらに2~3時間煮込んで作りますが、時間がかかりますし省エネを意識するとハードルが高い料理ともいわれます。
そこで、輸入牛肉を煮込んで柔らかくする方法を取り入れたい場合は、圧力鍋の使用が便利です。110℃を超える高温で調理するため、短時間の加熱にも関わらず長時間煮込んだように仕上がります。一般的な煮込み時間の1/3程度でできますので、とても効率的ですね。
圧力鍋よりは時間がかかりますが、自然な保温による余熱の利用で省エネにもつながります。
まとめ
輸入牛肉はサシが少ないため、加熱すると硬い食感になりがちですが、下処理や焼き方を工夫すれば柔らかく仕上げることもできます。ポイントは、筋繊維の処理と、水分(肉汁)のキープです。ステーキの場合は包丁で筋切りするか、全体にフォークを刺す・ミートハンマーで叩く下処理が効果的。焼肉や炒め物の場合は、漬け込みにより筋繊維を破壊したり、肉のph値を変化させて保水性を高めたりする方法が有効です。
また、ステーキの調理では、温度管理やふり塩のタイミング、火加減、余熱の利用がポイント。リーズナブルな輸入牛肉でも柔らかくする方法を実践すれば、美味しく食べられますよ。ぜひお家でもご紹介してきた方法を試してみてくださいね。
- 輸入牛肉を柔らかくする方法は、筋繊維の処理と水分保持がポイントとなる
- 筋繊維を切る・ほぐす・破壊する下処理を行えば、筋っぽさが軽減され柔らかい食感になる
- 焼き過ぎは水分が流出しやすくなるためNG。余熱も活用し焼き加減を工夫することで、美味しいステーキができる
記事の監修
岩川 祥子
管理栄養士・サプリメントアドバイザー
管理栄養士、サプリメントアドバイザー。
その他、ファスティングインストラクター、美肌食マイスターなど、「食」について数多くの資格を持つ。
ローフードマイスター名古屋守山東校を開校後、セミナー講師や食事指導を行いながら、専門家として多くの記事やコラムを監修。
日々、臨床現場での食事指導を続けながらも、イベント出演や料理教室を精力的に行うなど、活動は多岐に渡る。
Instagramやブログなどでは女性の健康をサポートする情報を発信している。