大澤 眞理(おおさわ まり) 「アクア・ブルーム」オーナー
お花屋さんにも「行きつけ」を作ってみませんか
茨城県つくば市にある「アクア・ブルーム」。
「みずみずしいお花をご提供したい」との思いが込められた店名にあらわれているように、店内には色とりどりでフレッシュな生花が溢れています。
お花屋さんの枠を超えた活動も積極的に取り組んでいる大澤眞理さん。「お花の学校を出たわけではないのですが、考えたり企画をしたりするのが大好きなんです」と教えてくださいました。
エネルギッシュな活動を続けるアクア・ブルームのオーナーを務める大澤眞理さんに、お花にかける思いやお花屋さんとの付き合い方、そしてご活動をお伺いしました。
留学先のカナダでフラワーアレンジメントの魅力に触れる
私は元々グラフィックデザインの学校を出て、10年くらいグラフィックデザインの仕事をしていました。優れたデザインを生み出すデザイナーに囲まれて、自分の「才能のなさ」に打ちのめされてしまって…。
30歳になる直前に、カナダのバンクーバーに語学留学をしたんです。雑貨の輸出入に興味があったので、「英語が喋れるようになるといいな」と思って。英語を学びたくて、地元のカルチャースクールでフラワーデザインの教室に通ったのが、お花に触れるきっかけでした。
私が仕事をしていた当時のグラフィックデザインは、ペンや絵の具を使って表現をしていました。そのペンや絵の具が、フラワーアレンジメントを習うことでお花に置き換わる感覚があったんです。絵を描くように、お花で自分の世界を表現したいと思い始めました。
1年半、バンクーバーと西海岸のヴィクトリアで語学を学び帰国しました。
帰国後は、東京に住んでいた姉の家に身を寄せた所、近くに有名なお花屋さんがあって、ちょうど募集を掛けていたんです。当時、銀座にあった「ホテル西洋銀座」で、ウエディングや館内装飾を担当したりと、3年半の間に色々なことに挑戦させて頂き、多くのことを学びました。
デザインの知見を活かせるフラワーアレンジメントに魅力を感じ、生花にのめりこんでいきました。
独立し茨城でお花屋さんを開業し「アクア・ブルーム」を開店
東京のお花屋さんで働いていた頃、両親は茨城で不動産業を営んでいて、「店舗のスペースが空いているから戻ってきてお花屋さんやらない?」と声を掛けられました。自分のお店を持てるって憧れですよね…。
でも、実際お店を辞めて、茨城でお花屋さんを初めてみたところ、東京と茨城の地域性やお客様のご要望の違いにビックリしました。
白金台で働いていたのですが、白金という土地柄もあって、外国のお客様や富裕層が多く、ギフト目的でのご購入が沢山ありました。それに、暮らしに季節感を取り入れるために、例えばお月見だと、ススキや菊のお花のご要望が多かったんです。でも、茨城だとススキは道端や空き地などに生えてるので売れないんですよね。それから、可憐な黄色の小花も、茨城では河原に咲いている花のようだと言われ人気がありません。
そんな感じで手探りをしつつ、不動産屋の片隅で1~2年お花屋さんをしていたのですが、結婚を期に茨城県つくば市に住居兼店舗を構えることになったんです。予め自宅の一角をお花屋さんに出来るように建てた、こだわりの詰まった店舗が「アクア・ブルーム」です。お陰様で、2020年9月にオープン16周年を迎えることができました。
つくば市は研究学園都市で、JAXAや関連する研究所がたくさんあり、同じ茨城県内でも住んでいる方の層が異なりました。当店は元々白金に合ったテイストを持ってきているので、供花も洋花で作ったりしていますが、つくば市にお住まいの方々には、アクア・ブルームのテイストを受け入れていただける土壌がありました。
「お客様ファースト」で日々の暮らしに寄り添う
地方のお花屋さんって「お任せして大丈夫かしら?」ってお考えになる方もいらっしゃるんです。ギフトを贈る際に安心して頼れるお花屋さんでありたいと思っています。通販のオーダーも増えてきているのですが、ベースは店舗でのコミュニケーションを大切にした接客です。
お花は、喜びにも悲しみにも立ち会うものなので、お花を通してお客様の悲しみを癒したり、喜びを盛り上げたりできるのはやりがいを感じますね。ご要望をお伺いして、ニーズに合わせてアレンジメントをお作りするするためにも「お客様ファースト」で、丁寧な接客とヒアリングを心がけています。
生花をメインに扱うので仕入れが難しい
プリザーブドフラワーも販売していますが、生花をメインに扱っているので苦労もあるんです。生ものなので破棄もありますし、管理や在庫のコントロールがとても大変です。
お花の仕入れって「賭け」みたいな所があるんですよ。「贈り物にしたいので、赤いバラを歳の数だけください!」っていきなり来店なさる方もいらっしゃるんです。ご来店を見込んで仕入れても、売れ行きが良くないと困りますし…。経営的には仕入れが一番大変ですね。
男性のお客様は、1回利用してくださると、記念日や誕生日などに定期的に足を運んでくださる方が多いです。
当店をご利用いただいたお客様の中で、素敵だなって思ったのは、「喧嘩した後のお詫びのブーケ」ですね。女性に限らずサプライズの贈り物は嬉しいですよね!
是非、仲直りの際にはお花をプレゼントしてみてはいかがでしょうか。
「行きつけのお花屋さん」を持つ大切さ
私は、「行きつけの花屋さん」を見つけるのが大切だと思います。行きつけの花屋さんを見つけて、コミュニケーションを取ることでいろいろな情報が入るし、花によっては水揚げの方法が違うということも丁寧に教えて貰えます。
それから、1輪だけお花が欲しいのに、初めてだとお願いしづらいこともありますよね。花は特別な日のものだけではないので、「花を飾るハードルをさげて欲しい」と思っています。当店にも、毎週バラを買ってくださる素敵な紳士がいらっしゃいます。週末は、その方を思いながらバラを仕入れるのが楽しみのひとつになっています。
また、花瓶を持ってきて「この花瓶にお任せで」というオーダーができるのも、行きつけのお花屋さんがある特権だと思います。花瓶のサイズをお伝えいただければ、花瓶に合わせて作ることもできますしね。
時代と共に、お花へのニーズも変化していく
そういえば、最近カスミソウが復活してきましたね。
お母さん世代の方は「カスミソウ」といえば、赤いバラの花束に入っているサブ的なイメージがあったと思います。けれども、若い方はその頃を知らないので、カスミソウが脇役ではなく、主役になることも多いんですよ。ブライダルブーケをカスミソウだけにしたりと、「私らしさ」を大切にしたい方やナチュラル志向の方に大変人気があります。
それと、若い方には「ドライフラワー」も人気ですね。生花にはないくすんだ色が魅力ですよね。けれども、ギフトで年配の方に差し上げる際には、「枯れたお花というイメージに抵抗を覚える方もいらっしゃる」ということをお伝えしています。年配の方は「ギフト」というと生花のイメージが強いので、贈る際には注意が必要となります。
お花を気軽に楽しむために開発した「アクアブルームバッグ」
コロナ禍以前は、8割くらいがギフトのオーダーだったんです。けれども、自宅でお花を楽しみたいという方が凄く増えましたね。
当店では、コロナの感染拡大が問題になる少し前から「アクアブルームバッグ」を導入しました。こちらの商品は、3~4年前につくばの中央公園のマルシェで、地元茨城県のバラ園の友人達と「バラブッフェ」をした時の思い付きがきっかけなんです。沢山の種類があるバラの中から3本選んでバックに入れてご購入いただいたのがとても好評だったんです。
そして商品化のために皆さんのご支援、ご協力の元にクラウドファンディングを通して形になった思い入れのある一品なんです。
「アクアブルームバッグ」は、持ち運べて、吊るせて、畳めて、エコバッグのように繰り返し使える花瓶なんです。そのアクアブルームバッグとお花のセットを販売しています。
お花が枯れたらお花屋さんにアクアブルームバックを持っていき、その場で素敵にアレンジしてもらうことも可能なんですよ。お花を上手に活けられない…、花瓶を持っていない…、と心配することもありません。お家に帰ったらバックをそのまま飾ることができるので安心です。
また、ゴミとなる包装紙や給水コットンなどを使用しないので環境に優しい商品です。
リラクゼーションサロン Aqua Bloom+ (アクアブルームプラス)
2020年の11月にアクア・ブルームの横に「リラクゼーションサロン Aqua Bloom+ (アクアブルームプラス)」がグランドオープンしました。
私は元々肩こりがひどくて、ずっとお世話になっていた施術者の方が居たんです。元々お花に触れていて、アロマにも造詣が深くて、その上マッサージも上手な方なんです。
お花は癒しですよね。「花や緑が飾ってある空間で施術をしたら癒されるよね」って意気投合してスタートしたんです。
ふたを開けてみたら、アクア・ブルームのお客様でリラクゼーションにも興味を持ってくださる方が思いの他多くて。「興味があったけど、行ったことはなかったの。アクア・ブルームさんなら間違いわよね」って、年配の方に声を掛けられたりして、花屋さんで築いた信頼関係が、意外な形で実感できて嬉しかったです。
人の縁が紡いでいく「これから」
コロナ禍以前には、アレンジメント教室も開催していました。
資格取得を目指すのではなく、誰でもできる体験レッスンなので特に決まりはなく、気軽にアレンジメントを楽しんでいただけるように心がけています。こちらは、場所をお借りして開催しているので、コロナ禍が落ち着いたらまた復活できればと思っています。
本当は私、花とグリーンがあるカフェがやりたいんです。それが、不思議なご縁があって、リラクゼーションサロンに変わっちゃったんですけど。計画を立てて実行していくよりも、ご縁と感覚を大事にしたい。「人生面白くないとね!」と、思っています。
Instagramに、アレンジメントの写真を沢山掲載しています。気に入った投稿を保存しておいて、店頭で見せていただけると、イメージを汲みやすいので是非ご活用ください。
大澤 眞理(おおさわ まり)
「アクア・ブルーム」オーナー
東京都出身。桑沢デザイン研究所を卒業し、グラフィックデザイナーとして10年勤務後、留学先のカナダにてフラワーデザインと出会う。
帰国後、東京・白金のサンフローリストにて藤澤保氏に師事し、ホテル西洋銀座(東京・銀座)のブライダル、館内装花等を担当。
退職後独立し、茨城県に「アクア・ブルーム」をオープン。