西脇 嘉重(にしわき かえ) 「dog&flower 杏こま」代表
ワンちゃんと過ごす愛しい日々に、お花で彩を添えたい
複数のお花屋さん勤務を経て、お花に関わってきた西脇嘉重さん。
愛犬の出産を機に、東京都江東区に「dog&flower 杏こま」をオープンし、愛犬を同伴可能なワークショップを開催しています。ワークショップの参加費用は一部、「公益社団法人アニマルドネーション」に寄付なさるなど、犬の保護活動なども積極的に携わっています。
dog&flower 杏こまの代表を務める西脇嘉重さんに、お花と犬にかける思いやワークショップの特徴をお伺いしました。
お花の持つ華やかさに魅かれて
スタイリストを目指して服飾専門学校に通っていた頃、1ヶ月に1度ディスプレイの授業がありました。お裁縫の才能に限界を感じていた私は、その授業でショーウインドウを飾る楽しさに触れてそちらに興味を持ちました。そのことを友達に相談したら、「お花屋さんは、ディスプレイとかも手掛けるよね」って。
「なるほど!」と思い、スタイリストを諦め、お花屋さんを目指すことにしました。
複数のお花屋さんで経験を積み、ブライダルを専門にしているお花屋さんに就職しました。アルバイト情報誌を見ていた時に、結婚式場の中にあるお花屋さんの募集に目が留まったんです。ブライダルはディスプレイに近くて、「これだ!」って思いましたね。
街のお花屋さんは小さな花束やアレンジメントがメインでしたが、結婚式場なら大きなアレンジが作れて、ドレスとブーケをコーディネイトするなどスタイリストの要素もあるのが魅力でした。
最初は小さいアレンジメントからスタートして、結婚式場のロビーの装飾なども手掛けていました。5~6年くらい働かせていただき、結婚を機に退職しました。その後、当時の仲間と受注販売のフリーのお花屋さんをたちあげて、ブーケや会場装飾を請け負っていたこともあります。
けれどもお花屋さんって肉体労働なんですよね…。腰痛を発症してしまって、お花屋さんは続けられなくなり、一時期OLを経験しました。OLとして働いていた時に犬を飼い始めて、それがきっかけになって「腰痛に悩まされることのない普通の生活をしたい」と思うようになりました。
一念発起して、いろいろな病院に通い治療をし続けることで腰痛が治りました。元々腰痛でお花の道を断念していましたが、腰痛が治ったことでまたお花に携わりたいと思い始めました。
大好きな「お花」と「犬」をヒントに杏こまをオープン
2016年、飼っていた犬が子犬を産みました。まだ幼い子犬を家で留守番させるのがしのびなくて…。その時に、今までの経験を活かして、大好きな「お花」と「犬」を絡めて、ワンちゃんを連れてきてOKなお花の教室を開こうと思いました。
2018年に、愛犬の「杏仁」と「小町」から名前をとって「杏こま(あんこま)」をオープンしました。
以前の杏こまのワークショップは、アレンジメントがメインでした。けれども、ワンちゃんも一緒に連れて来るとなるとアレンジメントを持ち帰るのが大変なんです。そこで、フラワーアレンジに拘るのをやめて、ワークショップでお花を使ったワンちゃんのためのアクセサリーや撮影グッズの制作をするようになりました。
愛犬家の方々は、一眼レフを趣味にされている方が多いんですよね。お花が咲いていたり、有名なスポットに行ったりして写真を撮ると思いますが、ワークショップでワンちゃんのためのアクセサリーを作れば、わざわざ出かけなくても、気軽に可愛い写真が撮れます。
ワークショップで花冠を作るきっかけは、カナダかアメリカだったと思うのですが、女性カメラマンの方が保護犬のピットブルの里親を探すために、ワンちゃんの頭にお花をつけた写真を撮っていたんです。「大型犬でも、お花をのせると可愛いな」と思って、そこから試行錯誤しました。
愛犬同伴で美しいアーティフィシャルフラワーの世界に触れられる
現在は、新型コロナウイルスの感染対策もあり、1回のワークショップの定員を生徒さん2名にしています。12~13畳のリビングに2台のテーブルを並べて、1つのテーブルに1人。アルコール消毒を行い、マスク着用でワークショップを行います。
ワークショップを受ける方は、ほぼ全員がワンちゃん連れで愛犬家の方ばかりです。ワンちゃんを飼っている方は、「何処に行くにも愛犬と一緒が良い」という方が多いんです。「一緒にワークショップに参加できるのが嬉しい」と喜んでいただける事が多いです。それに、愛犬家同士で情報交換ができるのも嬉しいポイントです。
ワークショップはワンちゃんのものが多いですが、ハロウィンやクリスマスなどの季節のアレンジメントも人気があります。特にクリスマスリースは、初めてでも可愛くできると好評です。
ワンちゃん用のアクセサリーに使うお花は、「アーティフィシャルフラワー(造花)」を使用しているので長持ちします。生花は水分があるので重いんです。アーティフィシャルフラワーは軽いので、小型犬の頭に乗せてもそこまで負担が掛からないのもポイントです。
昔は造花というと、いかにもな感じで写真で見ても生花との違いがハッキリ分かるものが多かったのですが、今は見分けがつかないくらい品質が高くなりました。私自身もともとブライダルの出身なので、「本物か偽物かわからない高品質なものを使いたい」と思っています。そのため、アーティフィシャルフラワーの選定にはかなり拘っています。
愛犬家だからこそ犬の命の大切さを理解することができる
3.11の東日本大震災で、飼い主さんと一緒にワンちゃんが助けられている映像に触れました。その時、犬を助けることに対して抗議があったことを耳にしたんです。そして、「犬の命は愛犬家じゃないと守れないんじゃないか」と思うようになりました。
「愛犬家だからこそ犬の命の大切さを理解することができる」「犬を飼っている人たちが、恵まれない環境のワンちゃんに寄付をしていかないとワンちゃんたちが助からない」と思ったんです。
動物が苦手な人ももちろんいらっしゃいますし、ペットの命の大切さを日々感じている方に協力をお願いできたら嬉しいなと思っています。犬を飼ってる人なら気持ちもわかっていただけると思うんです。
みんな「どうにかしたい」と思っているはずだけど、何処に寄付して良いかわからない…、何をして良いかわからない…。
そういう方も多いと思うので、杏こまワークショップに参加してくださった方全員を対象に、参加費の一部を寄付しています。愛犬と過ごした楽しい時間を、新しい家族を待つワンちゃんや猫ちゃんにおすそ分けできたらという気持ちで、気負わずにこれからも続けたいと思っています。
寄付先は「公益社団法人アニマルドネーション」です。杏こまをはじめたときに代表の方と知り合いました。ワンちゃんへの寄付を受け付けている団体は、地域別なことが多くて、寄付の使い道が「東京だけでいいのかな?」という思いがありました。
公益社団法人アニマルドネーションは、全国で活動している団体に対してバックアップをしています。寄付金を分配してくださるのが魅力に感じました。
お花が彩るワンちゃんとの暮らし
「お花を飾るのってハードルが高い」と思っている方も多いかもしれません。お部屋全体をお花のために綺麗にするのって大変ですよね。
でも1画コーナーを設けて、そこだけ掃除をして、綺麗な1輪挿しを置くだけで良いと思います。それが「花のある暮らし」を無理なく楽しむという意味では1番続けやすいですし、継続することで段々楽しくなってくるんですよね。
まずは、「その場所を見ると癒される」下地を作ることが大切です。トイレや洗面所でも良いので、1ヶ所にお花を飾ってお気に入りの空間を作ってみてください。
まだまだ遠い夢の話しですが、お花屋さんを併設したドックカフェを開きたいと思っています。ワンちゃんも一緒に入れるカフェで、ワークショップもできると良いなと。
実は新型コロナウイルスが流行する以前、杏こまでは、年に1~2回ソムリエの方をお招きしてワイン講座を開いていたんです。ワンちゃんを飼っていることによって制限されてしまうお酒を、ワイン講座に参加していただくことでワンチャン同伴で楽しむことができます。こうした空間を作れると素敵だなって思います。
ワンちゃんを飼い始めたばかりの方はしつけが気になって、カフェやドッグランに行くことを躊躇してしまう方もいらっしゃると思うんです。
杏こまのワークショップは生徒さん2名ですし、皆さん同じ経験をなさっているので、しつけなどの心配は不要です。愛犬家のコミュニティの場としてもご活用していただければと思います。
西脇 嘉重(にしわき かえ)
「dog&flower 杏こま」代表
高校卒業後、服飾専門学校に入学。そこで受けた授業をきっかけに、ディスプレイに興味を持ち花の世界へ。
複数の花屋でアルバイト勤務した後、正社員としてブライダル専門の花屋に入社。
2018年、自宅兼サロンの「杏こま」をオープン。花と愛犬をKWに、多彩な活動に取り組んでいる。