常深 美穂子(つねみ みほこ) 「miiipique-flower」店主
お花に触れたり、プレゼントすること。それは自分をもっと幸せにする方法
2021年から、千葉県浦安市の自宅でスタートした「miiipique-flower(ミーピケフラワー)」。
お花のレッスンと事前オーダー制のブーケ、アレンジメント、スワッグ、リース、お花の定期便など、生花の商品を販売しています。グレイッシュなアンティークカラーのお花や、グラデーションが美しい「複色」のお花を使ったナチュラルで優しい雰囲気のブーケが人気を集めています。
miiipique-flowerの店主を務める常深美穂子さんに、お花の持つ魅力や以前、5年間暮らしていたヨーロッパで触れた花文化についてお伺いしました。
駐在先のベルギーでアンティークカラーのお花に魅かれる
一番最初にお花に興味を持ったのは、高校生の頃、課外授業の華道を始めたのがきっかけでした。
それから結婚と出産を経て、主人の仕事の都合でヨーロッパに約5年駐在することになり、洋風のお花との出会いがありました。
ベルギーで、シックなアンティークカラーのフラワーアレンジメントを教えて頂ける恩師と出会い、月1回のペースでお花を習うようになりました。
近所のマルシェでは、週に3回、お花屋さんがたくさんの種類のお花を路上に並べ、見たことのない花々が日本よりも安価に手に入りました。1種類のお花が「10本1束」で購入できたので、友人と分け合ってブーケを束ねる練習をしたのがとても楽しかった思い出です。
「ベルギースタイル」という明確なお花のデザインはなく、フローリストによって作製するお花の雰囲気は様々です。私がフラワーアレンジメントを教えて頂いた先生は、先生のご自宅のお庭に咲いている草花を摘んできて、ブーケやアレンジメントに加えたりすることもあり、日本に比べてたくさんの葉物を使っている印象でした。
甘さを抑えたナチュラルでシックなデザインがとても素敵で、すっかりお花の世界にのめり込んでしまいました。
コロナ禍をきっかけに「miiipique-flower」をオープン
2019年に帰国して、1年間東京で有名な先生方のレッスンを受けていた頃に、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めました。
世界中で亡くなる方が日に日に増えていくニュースを見ていた時に「後悔なく、好きなことをやって生きよう」と決意し、「miiipique-flower(ミーピケ フラワー)」をオープンしました。
私は最初、どちらかというと、黙々と職人的に作ることが好きだったので、まずはオーダー専門でスタートしようと考えました。
現在もですが、Instagram、またはWebサイト経由でご注文を頂いて、お客様とはメールなどでコミュニケーションを取って送り主様の想いに寄り添うようにしています。
店名の「miiipique-flower」の「pipue(ピケ)」には、「さす」というフランス語の意味があって、パリのお花屋さんでは「アレンジメント」の意味で使われているそうです。
自分の名前の「美穂子」と合わせて、「miiipique」と命名しました。
思わずうっとりしてしまう、アンティークカラーのブーケが人気
グラデーションが美しい「複色」のお花を使い、お花の色と色の重なり合いができると、色彩の微妙な差異やつながりが出て、うっとりする何とも言えない柔らかい雰囲気になるんです。ちなみに「複色」とは、一言で「〇〇色」と表現できない、複数の色がお花に入っている時に表現する花業界独自の色の名前です。
私自身、グレイッシュな色味が好きなので、アンティークカラーの花合わせを得意としています。原色だけを使うより、色と色が溶け込むようなおしゃれな雰囲気が出て、どんなインテリアにも馴染みやすいです。
ふわっとナチュラルな質感のブーケやアレンジメントは、お部屋に色を添えるだけではなく、飾る人の心にそっと寄り添ってくれるような温もりがあります。
お花の定期便について
定期便は、ヤマト運輸を利用した「ご配送」と、ご近所の方向けにmiiipique-flowerまで取りに来て頂く「直接引き取り」の2種類があります。
ご配送タイプは、多品種でボリューム感があるものが好きな方にも対応できるよう、価格を2パターンで設定しています。
①、miiipique-flower Webサイト: お花の定期便「エンリッチコース」3か月分(配送料込み)についてはこちらから
②、miiipique-flower Webサイト: お花の定期便「ブルーミングコース」3か月分(配送料込み)についてはこちらから
直接引き取りは、ご配送ではなくご近所さんに取りに来ていただく商品なので、その分少し価格を抑えて、日常に飾りやすくしたのが特徴です。
価格は押さえましたが、街のスーパーでは手に入らない可愛いお花を色々詰め合わせるようにしています。
miiipique-flower Webサイト: お花の定期便「マリーナコース」3か月分(直接引き取り)についてはこちらから
生産者さんとお客様の橋渡し役として、
お花の価値を正しく伝え、お花をもっと身近な存在に感じて欲しい
新浦安エリアでは、大型ショッピングモールでお花を扱っていますので、仏花やおうちに数本飾る場合はスーパーで購入し、ギフト用のお花は地元のお花屋さんで購入する、 といった使い分けをしている印象です。
以前から、人口やニーズに対してもう少しお花屋さんがあったら良いのになと感じていました。
日本にはまだまだスーパーなどでは見かけない素敵な切り花が存在します。日本のお花の市場での品種の多さとクオリティーの高さには、ベルギーから帰国後、とても驚きました。
一人でも多くの方に切り花の美しさ、お花を愛でることの素晴らしさを知ってもらい、心と生活のゆとりと豊かさに繋がるお手伝いをさせて頂ければと思っています。
日本はお花の品種改良や品質管理、物流の努力に素晴らしいものがあります。生産コストの面ではハウス栽培は暖房費がかかったり、世界情勢によって原油の価格が上がると 輸送費にまで影響が及び価格に反映されるそうです。
生産者さんや仲卸さん方のこういった努力やご苦労は、一般の方にはなかなか知られることはありません。
フローリストたち自身も、知ろうとする意欲がないとなかなか耳に入ってこないのが現状です。
生きているお花を生産、管理することはとても大変で、市場で素晴らしいお花と出会えた時はいつも頭の下がる思いです。
お花1本がお客様の手元に届くまで、本当に多くの方の手間ひまと想いが込められています。
生産者さんから仲卸さん、花屋さん、配送業者さんがきちんと運んでくれて、一度もバトンを落とすことなく繋がれて初めて、お客様の幸せな笑顔が引き出せるんですよね。
「お花って高いよね…。」で終わらないように、お客様と生産者さんの橋渡し役として、正しい価値をお伝えできるようになるのが目標です。
私自身がもっと生産者さんのもとに出向いたり、お話を聞く機会を設けて、綺麗なブーケが出来上がる裏側のこともお客様にお伝えできたらなと思っています。
お花屋さんの仕事は早朝から
皆さんご存じないかもしれませんが、お花屋さんの仕事は、市場が4時頃から開くので、朝がとても早いです。一番良いお花を仕入れるとなると、明け方に行くのがベストです。
私は、1週間前までにオーダーを頂くようにお願いしていて、仲卸さんに事前に注文する場合もあれば、早朝に市場に入ってきた良いものから選ぶこともあります。
綺麗な状態のお花をお客様にお渡ししたいので、特に花びらを傷つけないようにとても気を使いますね。
市場からの帰宅後は、何はさておきお花の処理を最優先して、鮮度を保つように温度管理などを心掛けています。
水あげ方法もお花によって違うので、クリスマスローズやスカビオサなどの水があがりにくいお花は、新聞紙に巻いてたっぷりのぬるま湯につけてあげたりします。
お花って冷たいお水をあげるイメージがあるかもしれませんが、40度くらいのぬるま湯の方が吸い上げが良いです。まるで温泉につかっているようですね。
お花を部屋に飾る時の注意点
お花屋さんが水揚げ処理をして、たっぷりと水を吸わせてあげているので、お家で飾る花瓶の水の量は「少なめ」で大丈夫です。
毎日水替えをして、バクテリアを繁殖させないように。そして、茎は少しずつカットして、フレッシュな切り口にしてあげてください。ぬるぬるは雑菌繁殖のサインですので洗ってあげましょう。
室内の気温は低い方が花の持ちは良いですし、風通しが良い場所もお花にとっては良い環境ですね。
注意したいのが「エアコン」です。お花を飾る際には、エアコンの風が直接当たる場所は避けてください。暖かいところもすぐ花が開いてしまうので禁物です。
お花を買うことは、枯れるまでの「ときめく時間」を買うこと
お花って、どうしてもずっともたないのに高いというイメージがありますよね。私も以前はそうでした。
でも、お花に触れる体験を通してその考えは変わっていきました。
お花を飾ること、植物のケアをすることは、人の心のケアにもなりますし、想像以上の癒しのエネルギーによって、生活の質も向上します。自分の好きなお花に触れ、朽ちるまでの変化が面白い生花を見ていると自然と元気が湧いてきますよ。
お花を眺めながらうっとりと心ときめく時間を持つことは、現代人には大切なことではないでしょうか。セルフケアの1つとしてお花を取り入れる生活が浸透すると嬉しいですね。
「部屋が散らかっているからお花を飾るのは…」とおっしゃる方も多いですが、完璧は求めず、自分の半径1mの世界だけでも整えることから始めると良いと思います。
実際、お花を飾るとお部屋の整理整頓や片づけがしたくなるので、お花を先に飾ってみるのも案外良いかもしれません。
食べ物と違って毎日絶対に欠かせない物ではありませんが、衣食住にプラスして心の栄養、充実になる要素として認識して頂けたら嬉しいです。
そういう意味では、映画や音楽などのエンターテイメントの存在と似ていますよね。
ヨーロッパの生活と花
ヨーロッパの方は、友人の家に招待されたらお菓子やお酒と一緒にお花を持っていく文化があり、週末のマルシェには沢山の男性が、恐らく奥様にお使いを頼まれてブーケを抱える姿を目撃します。男性だけでお花屋さんでお買い物される姿も多く見られますよ。
バレンタインには、日本とは逆に男性から薔薇の花束を贈る習慣があり、高校生の男の子が1本の薔薇を持って校門で女の子を待っていた光景が、今でも忘れられません。バレンタインの日は朝からコンビニの軒先で薔薇の花束が手軽に買えるようになっていました。とても素敵ですよね。
日本でも、もっと気軽にお花を贈る文化になって欲しいです。
お花をデザインする上での想い
お祝いのお花、お悔やみのお花、イベント事やご自宅用のお花、嬉しいときも悲しいときも様々な人生のシーンを彩る存在ですが、いつもご依頼される方の心に寄り添い、受け取る方の心にぽっと明るい光が灯るようなギフトを作って行きたいと思っています。
私はギフトのお花をデザインしますが、一番大事なのは依頼主であるお客様の気持ちがお花にのって、大事な人のところに届くこと。
喜んで頂けるとほっと安心するのと同時に、気持ちが伝わるお手伝いが出来て良かったと思います。
以前友人から「お花をもらったことって一生忘れないよね」と言われたことがあります。とてもハッとしたメッセージでした。確かにそうですよね。
私はアンティークカラーのお花をよく使いますが、お花をもらった思い出自体が、一生色褪せない嬉しい思い出になってもらえたらいいなぁと思います。
4月からレッスンが始まり、現在初級クラスの生徒さんを募集しています。
お花は興味があったけどずっとできなかった方や、初めてで不安という方、もう一度基礎のおさらいがしたいという方もぜひどうぞ。はさみの使い方からスパイラルテクニックまでじっくり親身に、優しくお伝えしています。
ご自身の新たな楽しみ、自分を癒す新しい方法になれるように、私自身が常にブラッシュアップしながらお花の魅力をお伝えしていけたらと思っています。
お花を通して、小さな幸せに気づける毎日になったらいいですね。
常深 美穂子(つねみ みほこ)
「miiipique-flower」 店主
結婚後ご主人の転勤を機に、ドイツに1年、ベルギーに4年駐在。
その際に触れたフラワーレッスンで、アンティークカラーのアレンジメントのとりこになる。優しい色合いのグラデーションを意識したブーケが人気を集めている。