Interview

Haruna KUBOTA(くぼた はるな) 「GERMER」店主

「花のある暮らし」を多くの方に広めていきたい

「花のある暮らし」を多くの方に広めていきたい

東京都中野区沼袋にある「GERMER(ジェルメ)」は、隠れ家のような秘密の場所。
毎週金・土・日曜日の3日間のみ営業している、パリスタイルのお花屋さんです。オーナーのHaruna KUBOTAさんは、2018年にパリに留学をし、パリスタイルを学んだそうです。

GERMERの店主を務めるHaruna KUBOTAさんに、パリのお花屋さんで学んだご経験や、パリスタイルの持つ魅力や特徴、留学をする上で必要な事などをお伺いしました。


「やりたいこと」にトコトン向き合ってお花屋さんに

小さい頃から草花には興味があって、友達と遊びながらヨモギを見つけたら摘んで食べるとか…、そういうのを遊びの中で経験していました。

高校の授業で華道を学ぶ時間があり、そこで生け花を経験しました。華道に触れた時に「花を生ける」という楽しさを知りました。

高校卒業後は専門職を目指して、お花屋さんかトリマーかで悩みました。悩んだ結果、トリマーの専門学校に通って、動物病院で2年間働きました。でも、実際働いてみて動物は大好きだったんですが…。「自分のやりたい仕事ではない」と思ったんです。

その後、「自分のやりたいこと」にトコトン向き合って考えた時、「やっぱり、花が良いな」って再認識しました。

「やりたいこと」にトコトン向き合ってお花屋さんに

2013年に街のお花屋さんで働き始めて、その後いくつか店舗を転々としました。

「フラワードリーム」という花の展示会に携わるお花屋さんで働いていた時期もありました。その時に「花は無限の表現ができる」と知って、どんどん花に夢中になっていったんです。

本屋さんで見つけた雑誌に、「パリのお花屋さん」特集があったんです。その雑誌で、「パリには素敵なお花屋さんがたくさんある」、そして「パリの花ってこんなに綺麗なんだ」っていうことを知りました。

その時に、パリでフラワーデザイナーとしてご活躍しておられる斎藤由美先生を知りました。斎藤由美先生のブログなどを拝見して、パリスタイルにとても興味を持ったんですが、まだ私は花屋としての経験が浅かったので、憧れを胸に秘めて働いていました。

私は花屋としての経験が浅かったので、憧れを胸に秘めて働いていました

パリスタイルを学ぶために2018年パリに留学

27歳の時に、銀座にある「市川バラ園」というお店で働いていたのですが、オーナーの市川さんに「将来は何をしたいの?」って聞かれたことがありました。

その時は市川バラ園さんでは扱っていなかったブライダルに興味があったので、正直にお伝えした所、「年齢的にもブライダルに行ったほうが良いんじゃないかな?」って背中を押していただきました。その後、ホテル専属のお花屋さんに転職をし、ブライダルやホテルの装花の経験を積みました。

街のお花屋さんは、小さなブーケや店舗に並べる小さなアレンジメントを作るのが主体でした。一日の作業の流れや花の下処理といった、花に触れる上で欠かせない経験を積めたものの、デザインのあるスタイルを学ぶことができませんでした。

そこで、ブライダルに挑戦してみたんです。けれども、ブライダルも固定された形がベースになっていて、装花は経験できたのですが、デザインへの拘りは期待値ほどではなく、同じような花材でメインのテーブルや客席の装花も大体決まっていたんです。

パリスタイルを学ぶために2018年パリに留学

この頃、私は既にパリスタイルに夢中だったんです。市川バラ園のオーナーの市川さんはパリによく足を運んでいて、「本当に素敵な所なのよ」って本を見せて頂いたりして。パリスタイルに触れることで、花への情熱が沸いていったんです。

けれども、当時は国内でパリスタイルを学ぶことができる場所は限られていました。斎藤由美先生に師事しているMigiwa flowerの秋貞美際先生から、1年間レッスンを受けてパリスタイルを学びました。

当時、ワーキングホリデービザは30歳までしか取得出来ませんでした。「年齢的にも本気でパリに行きたいなら今考えないとダメだ」と思ったので、留学費用を貯めるために思い切って花屋を辞めて、家電量販店で働きました。

そして、2018年にパリに旅立ちました。

2018年にパリに旅立ちました

1年間のパリ留学でさらにパリスタイルの魅力の虜に

パリにもいろいろなお花屋さんがあって、さまざまなスタイルがあります。

その中でも私は、斎藤由美先生のデザインが凄く印象的で好きでした。斎藤由美先生は昔、ローズバッドのオーナーであるヴァンソン・レサール氏と一緒に、クリスチャン トルチュというお花屋さんに勤めていました。そこが、私の求めるパリスタイルの元祖なので、お2人の元で学びたいと強く思いました。

とはいえ、フランスで働くためには「CONVENTION DE STAGE (コンベンションスタージュ)」という研修協定書の取得が必要です。スタージュというのは「研修」の意味で、インターンシップの扱いです。

1年間のパリ留学でさらにパリスタイルの魅力の虜に

留学サポートセンターを介して紹介して貰うケースが多いのですが、指定されたのが希望するお花屋さんではなかったので、エリック・ショウヴァン氏のスタッフと掛け合い、スタージュの許可を得て研修することができました。

エリック・ショウヴァン氏のお花屋さんはとてもオシャレで、エリック・ショウヴァン氏自体がセンスのある方で、「間近にいって学びたい」と思いました。GUCCIなどの有名なブランドとも契約しているので、そうしたブランドの装花にも興味があったんです。

コンベンションスタージュは、1店舗3ヶ月しか研修できないルールがあるのですが、エリック・ショウヴァン氏のお花屋さんはパリに3店舗あったので、計6ヶ月エリック・ショウヴァン氏のもとで学びました。

計6ヶ月エリック・ショウヴァン氏のもとで学びました

その後、ヴァンソン・レサール氏のローズバッドで3ヶ月間研修しました。

ローズバッドで研修するには、斎藤由美先生の許可を得ることが必要です。斎藤由美先生のパリスタイルを理解していること、花の知識と経験があり、ローズバッドが好きで本気で学びたい方を対象としています。

ローズバッドは、斎藤由美先生の許可がないと働けないお花屋さん

コンベンションスタージュは研修扱いではありますが、お給料も出ます。けれどもそれだけで生活するのは難しいです。

私は働きながら斎藤由美先生やアイロニーのオーナーである谷口さんのレッスンにも通ったりしたので、さらにお金が掛かりましたが、1年で200万円位が留学費用の目安だと思います。

本当に学びたいのであれば、目的を考えて資金をちゃんと確保して留学をするのが自分のためになると思います。

目的を考えて資金をちゃんと確保して留学をするのが自分のためになる

実は留学の決意をした時点では、フランス語が全く話せませんでした。日本語を話せるフランス人の方に月に1回位マンツーマンレッスンをお願いしましたが、ほぼ独学で渡仏したんです。フランス語は聞き取りが難しいので本当に焦りましたし、最初はかなり必死でした。

エリック・ショウヴァン氏のお花屋さんでは、花を作れる人にはどんどん接客をさせてもらえるので、そこで言葉を覚えました。

花を作れる人にはどんどん接客をさせてもらえるので、そこで言葉を覚えました

草花を合わせて自然を表現する「パリスタイル」

パリスタイルを言葉で表すなら、「草花を合わせて自然を表現するスタイル」でしょうか。花の間にグリーンを入れて、小さい花で動きを出して。自然のモノを使って田園風のブーケを作るんです。

そのため、花の向きや動きも綺麗に揃えるのではなく、自然に咲いているように表現するのが特徴です。

草花を合わせて自然を表現する「パリスタイル」

先ほどお話ししたエリック・ショウヴァン氏のお花屋さんも、ローズバッドも実は全く違うデザインなんですよ。

エリック・ショウヴァン氏
エリック・ショウヴァン氏は、華やかで平たく作るラウンドブーケで、ロマンチックでボリュームがあるのが特徴です。

エリック・ショウヴァン氏は、華やかで平たく作るラウンドブーケで、ロマンチックでボリュームがあるのが特徴です
エリック・ショウヴァン氏は、華やかで平たく作るラウンドブーケで、ロマンチックでボリュームがあるのが特徴です

ローズバッド
ローズバッドは、自然さを活かしたスタイルが特徴です。花材を使用するのは3種類のみで、その中でいかに表現していくかが求められます。

ローズバッドは、自然さを活かしたアレンジメントが特徴です
ローズバッドは、自然さを活かしたアレンジメントが特徴です2

花への熱がどんどん高くなっていく

お花屋さんは体力勝負です。はさみの使い方や花の下処理の仕方も、花によって変わります。仕入れてからの下処理が一番大事で、お花屋さんで働いたら、まずは下処理のやり方を覚えます。ブーケやアレンジメントもすぐに上手に作れるようになる訳ではありません。

日本の方が下処理は細かくて丁寧だという印象があります。

花への熱がどんどん高くなっていく

エリック・ショウヴァン氏のお花屋さんではディスプレイに力を入れています。そのため、花を仕入れたら頭の高さを均等になるように綺麗にカットし、要らない葉物を取って茎を切って水に生けるんです。大量の花を仕入れるので、オープン時間に間に合うようにスピード勝負です。

こうした下処理のやり方や花の扱い方の基礎を学ぶことで、アレンジメントを作ることができるようになります。

下処理のやり方や花の扱い方の基礎を学ぶことで、アレンジメントを作ることができるようになります

以前働いていたお花屋さんで、凄く素敵なアレンジメントを作る店長に「どうしたらそんなに素敵な花ができるのですか?」って聞いたことがあるんです。

そしたら、「10年かかってやっと花のことを理解して作れるようになる」と言われました。だから私も、上手くいかないことも勿論あったんですが、自分が納得するものができるまで10年はやり続けようと思って。それから花への熱意がより高くなった気がします。

「ただ花に携わるだけじゃなくいろいろな経験を積みたい」と思いパリに留学をして研修させていただきました。それぞれ違うデザインを学ばせていただいたので、GERMER(ジェルメ)ではそれを伝えていきたいです。

「ただ花に携わるだけじゃなくいろいろな経験を積みたい」と思いパリに留学

花のデザインって凄く自由で、仕入れる種類もお花屋さんによって違うんですよね。無限大の表現ができるのはやりがいのひとつだと思います。

「デザインの追及」と「表現の豊富さ」、そして「お客様の笑顔」。

その3つが花に携わる原点でしょうか。

ブーケとアレンジメントは知識があるだけではなく、作り方を研究して、コツコツと数を重ねて続けていかないと納得のいくものができません。追求心や探求心、花への情熱がないとダメなんです。

パリでも、わざわざ日本語で「ありがとう」と言葉をかけてくださる方がいたり、チップを貰ったりしました。こういうポジティブなフィードバックが、私の情熱を支える原動力になっています。

ポジティブなフィードバックが、私の情熱を支える原動力になっています

2021年4月 「GERMER」をオープン

「GERMER(ジェルメ)」は、フランス語で「芽生える」という意味です。

留学前にどんなことをやっていきたいか自問自答したことがありました。小さなことでもいいから何か芽生えたらと…フランス語の辞書を開いたらGERMERとあって。GERMERで花に触れることによって、出会いや感動が芽生え、幸せが芽生えるきっかけになるようにと思いを込めました。

GERMERの営業は毎週金曜日~日曜日で、ご自宅用だけではなく贈り物のご要望が多いです。芸能関係の方へ贈る、収録後の贈呈花のご注文もあります。店頭販売やInstagram、オンラインショップ経由のオーダーも増えてきました。

2021年4月 「GERMER」をオープン

販売だけではなく、パリスタイルをお伝えするレッスンも行っています。はじめての方には基本の「Bouquet Rond lesson(ラウンドブーケレッスン)」がおすすめです。

「Dried flower lesson(ドライフラワーレッスン)」では、ドライフラワーになる花材だけで作るので、長く花を楽しみたい方にピッタリです。

「Champetre bouquet lesson(シャンペトルブーケレッスン)」では、自然に近い無造作なブーケを作成します。花材数が多いので中級者向けのレッスンです。「Grand bouquet round(グランドブーケラウンド)」は、より花材数が多く、華やかなブーケで上級者向けのレッスンです。花材数が多い花束を組むのって結構ハードルが高いんですよね。

「Throwing in Flower lesson(スローインフラワーレッスン)」は、花瓶に生ける「投げ入れ」とシャンペトルブーケが作れるレッスンです。

GERMER Webサイト: 各Lessonについてはこちらから

パリスタイルをお伝えするレッスンも行っています

ワークショップは毎月行っていたのですが、コロナの影響もあるので状況を見て開催しています。「花のある暮らし」を楽しむために、リースやスワッグ、アレンジメントを季節の花で作っています。

個性的な無農薬のオーガニックフラワーだけで作るアレンジメントとかも好評でしたね。季節に合わせて毎月テーマを変えています。


デザインユニット「F.I.N.D UNIT」

GERMER(ジェルメ)は週3日の営業で、他の平日は夫の窪田俊とのデザインユニット「F.I.N.D UNIT」の活動を行っています。

夫はインテリアスタイリストで、2人でユニットとして「インテリアと花や植物の空間スタイリング」に取り組んでいます。インテリアに花を飾ることで、空間の表現が変わるんですよね。

デザインユニット「F.I.N.D UNIT」

パリで自宅に花を飾る暮らしを間近で見てきた中で、「海外の空間スタイルを日本でも表現していきたい」と思ったんです。

ユニットの活動では、カタログや撮影、ショールームのディスプレイなどに取り組んでいます。

ユニットの活動では、カタログや撮影、ショールームのディスプレイなどに取り組んでいます

「花のある暮らし」を広めていきたい

自宅にいる時間が増える中で、花を見ているだけでも癒し効果があります。花を暮らしに添えるだけでも家の空間が変わります。

花って手間が掛かるイメージがありますが、手間をかけられない方は手入れが必要ない花材で作られたリースやスワッグなどを飾ってみてはいかがでしょうか。

生花を楽しみたい方は、直接エアコンの風が当たる場所は避けてください。それと、直射日光が当たる場所は、花がすぐに開いてしまいます。風通しが良く、エアコンの風も当たらない玄関先や風通しが良い窓辺などに飾ると長く楽しめます。

「花のある暮らし」を広めていきたい

GERMER(ジェルメ)は隠れ家でひっそりとした所にあるので、お客様とゆっくりコミュニケーションを取りながら花のことやパリスタイルの素晴らしさをお伝えすることができます。

コミュニケーションを大切にして、「なごむ」お花屋さんにしていきたいですね。

「なごむ」お花屋さんにしていきたいですね

今後は、レッスンを対面だけではなくオンラインで開催してみたいと考えています。

それと、ブライダルの表現を増やしたり、デザイン系のアートの花の仕事にも携わりたいと思っています。探求心を持ってどんどん経験を摘んでいきたいです。

コロナ禍で、ご自宅で過ごす時間が長くなった方も多いと思います。

殺風景な部屋に花が1輪あるだけでも暮らしが豊かになるので、「花のある暮らし」をはじめてみませんか。

花選びに迷ったら、ぜひGERMERにご相談ください。

花選びに迷ったら、ぜひGERMERにご相談ください

Haruna KUBOTA

Haruna KUBOTA(くぼた はるな)

「GERMER」 店主

国内のお花屋さんで勤務した後、2018年にパリへ1年間留学。
2021年4月に「GERMER」をオープンし、パリスタイルの花の魅力と「花のある暮らし」を広めている。

GERMER

GERMER

東京都中野区沼袋3-24-19

TEL:090-5213-4639

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