カフェインを抜く方法とは?摂り過ぎによる影響についても解説
記事の監修
平井 杏奈
管理栄養士・オンラインフードクリエイター
食に関わる資格を活かし、美容エステサロンで体調や減量に悩まれる方へ食事指導を担当。
その後、糖質オフやナチュラルな食品を中心として取り扱う飲食事業で商品企画や開発などを経験。
現在は、「安定した豊かな心とからだの健康を保つ食事」を広めるため、オンラインフードクリエイターとして独立。
日々、仕事や家事・子育てなど今を忙しく生きる全ての方へ向けた、食に関する記事の執筆やレシピ監修などの活動をしている。
コーヒーや紅茶を飲むと、頭がスッキリしたり気分がリフレッシュできたりしますよね。これらがカフェインの効果であることはよく知られています。カフェインの摂取により眠気覚まし効果やリフレッシュ効果を得られますが、その一方で、摂り過ぎると体に悪影響を及ぼすことがあるため注意が必要です。カフェインの摂り過ぎを避けることが大切ですが、ついコーヒーを飲み過ぎてしまった…ということもあるかもしれません。では、体からカフェインを抜く方法はあるのでしょうか。
そこで今回は、カフェインを抜く方法について探っていきます。カフェインの働きや、過剰摂取による影響についても改めて学んでいきましょう。健康に悪影響を与えない摂取量や、上手なカフェインの取り入れ方も併せてご紹介します。ぜひ参考になさってください。
- 日頃からコーヒーや紅茶など、カフェイン入りの飲料をよく飲む方
- 体からカフェインを抜く方法があるのか知りたい方
- カフェインのメリットとデメリットを詳しく知りたい方
目次
カフェインとは
カフェインとは、どのような成分なのでしょうか。まずは、カフェインの特徴や作用についてご説明します。また、カフェインの特性を利用した上手な活用法についてもご紹介します。そして、カフェインを過剰摂取した場合にどのような健康障害が起きるのかということについても、併せて見ていきましょう。
カフェインの作用
カフェインは主にコーヒー豆や茶葉に含まれる食品成分で、アルカロイドの一種です。特徴的なのが、生体内に存在するアデノシンという物質と似た化学構造をしていること。アデノシンには神経を鎮静させる作用があり、脳内のアデノシン受容体に結合することで、神経を興奮させるドーパミンやヒスタミンの発生を抑制。この作用により、人は眠気を感じるのです。
ところが、カフェインはアデノシンに構造が似ているため、アデノシン受容体に結合できてしまいます。そうすると、アデノシンが結合できなくなるため、神経鎮静作用が働かなくなるのです。また、心拍数も下がりにくくなります。カフェインが眠気覚ましに効果的なのは、この働きが原因です。
その結果、神経が興奮し眠気を感じにくくなるのが、カフェインの眠気覚まし効果の仕組みです。
カフェインには眠気覚ましや頭をスッキリさせる以外にもさまざまな効果が期待できます。神経が興奮することにより、疲労感が軽減されるように感じるのもその一つ。また、カフェインには利尿作用があるため、体の余分な水分が排出されやすくなり、むくみなどの軽減にも役立ちます。
そのため、頭痛薬にも無水カフェインが配合されたものがあります。
有効な活用方法
このように、カフェインには神経鎮静を抑制する働き(神経興奮作用)、利尿作用、血管収縮作用などがあります。これらを有効に活用すれば、仕事や勉強への集中力や効率アップ、スポーツのパフォーマンス向上、むくみや頭痛の軽減などの効果が期待できます。実際に、仕事の合間にコーヒーでブレイクタイムを取ったりすることはよくありますよね。カフェインと上手に付き合うことができれば、生活に役立てる強い味方になるでしょう。
- 神経興奮作用(アデノシンの働きを抑制):眠気覚ましに(仕事や勉強の効率化)、スポーツに
- 利尿作用:むくみの予防や改善に
- 血管収縮作用:血管拡張が原因の頭痛の軽減に
ただし、あくまでもこのようなメリットを得られるのは、適量を摂取した場合です。カフェインは、過剰摂取すると逆に悪い影響をもたらしてしまうため、摂取量には十分に注意が必要。どのくらいが適量なのかについては後ほど詳しくご紹介します。まずは、カフェインの過剰摂取による影響を見ていきましょう。
摂り過ぎるとどうなる?
カフェインは中枢神経系に刺激を与えますので、過剰に摂取すると神経が過敏になり、めまいや心拍数の増加をはじめ、震えや不眠、不安などが引き起こされます。また、消化器官が過剰に刺激されることにより、吐き気や下痢などを起こす場合もあります。これらは一時的なものですが、カフェインの摂り過ぎが慢性的になると、症状が続くことが考えられます。さらに、人によっては高血圧のリスクが高まる可能性もあるため注意が必要です。
これは、妊娠中にカフェインを摂り過ぎると(300mg以上/日)、出生時の低体重や流産、死産のリスクが高まる可能性があるからです。(※WHOの資料より)
カフェインを多く含む食品
カフェインを含む食品はコーヒーや紅茶などが有名ですが、ほかにもさまざまな食品に含まれています。コーヒー豆や茶葉から抽出されたカフェインは、食品添加物(苦味料等)として利用されることも。食品以外では、前述のように頭痛薬のほか、眠気防止薬や酔い止め薬などに配合されることもあります。
ここからは、カフェインを含む代表的な食品をご紹介していきます。併せて、農林水産省の資料を元に、一般的なカフェインの含有量もお伝えします。ただし、同じコーヒーでもカフェイン濃度が同じとは限りません。カフェインの含有量は製品によって異なりますので、それぞれのパッケージなどの記載情報をチェックしましょう。
コーヒーや紅茶、緑茶
コーヒーや茶類は、カフェインを含む代表的な飲料です。茶類にはカフェインを含むものとノンカフェインのものがありますね。カフェインの入ったお茶は、紅茶、緑茶、ほうじ茶、烏龍茶、抹茶、玄米茶などさまざまです。コーヒー豆や茶葉の量、また抽出の仕方によりカフェイン濃度は異なりますが、100mlあたりの目安は下記の通りです。
- コーヒー:60mg
- 玉露:160mg
- 紅茶:30mg
- ほうじ茶:20mg
- 煎茶:20mg
- 玄米茶:10mg
あくまでも目安ではありますが、同じ量でもコーヒーは紅茶の2倍量のカフェインを含んでいることや、玉露のカフェイン量が非常に多いことがわかります。同じ日本茶でも、玄米茶は比較的カフェインが少ないなど、違いが見られますね。カフェイン摂取量を意識すると、飲み物の選び方も変わってくるのではないでしょうか。
エナジードリンク、栄養ドリンク
清涼飲料水の中でも、エナジードリンクにはカフェインが入った商品が多いです。カフェインのほか、アミノ酸やビタミンなどが配合されており、疲労回復などのために飲む方が多いですね。さらに、滋養強壮の効果が期待できる栄養ドリンク(指定医薬部外品)にもカフェインが含まれます。こちらも、エナジードリンクと同様に疲労回復や不調の改善のために用いられますが、いずれも飲み過ぎには注意が必要です。
- エナジードリンク:32~300mg
- 栄養ドリンク:50~100mg
栄養ドリンクは50ml程度の小瓶で販売されているものが多いため、1本あたりのカフェイン量は上記の半分の25~50mgとなります。エナジードリンクは栄養ドリンクよりもサイズが大きめですが、カフェイン量は製品によってかなり差があるため、大きいものほど多いとはいいきれません。いずれも、カフェインのほかにもさまざまな成分が含まれていますので、製品の記載情報を確認して1日あたりの用量を守るようにしましょう。
そのため、カカオ豆から作られるチョコレートやココアにもカフェインが入っています。
特に、カカオの割合が高いものほどカフェイン濃度も高くなりますので、食べ過ぎ・飲み過ぎには気を付けましょう。
カフェインの適量はどのくらい?
カフェインを摂り過ぎると体に悪影響が出ることや、カフェインの多い代表的な食品についてご紹介してきました。特に、コーヒーや紅茶、緑茶などはほとんどが水分のため、気付かないうちに飲み過ぎてしまうこともありそうですよね。1日にどのくらいまでならカフェインを摂取しても問題ないのか、また、それはコーヒーやお茶何杯分に該当するのか、知っておくと安心です。
日本ではカフェインの摂取量について明確な基準や上限などを提示していません。そこで、海外におけるカフェイン摂取量に関する情報をご紹介します。参考になさってください。
1日あたりのカフェイン摂取量
農林水産省の資料(※上記と同様)では、アメリカ、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリア・ニュージーランドにおいてカフェイン摂取量に関してそれぞれの見解が提示されています。
米国食品医薬品局(FDA)では、カフェイン摂取による危険な悪影響がない量として、健康な成人の場合1日あたり400mgとしています(妊婦、授乳婦、妊娠予定の方、服薬中の方はかかりつけ医への相談を推奨)。また、米国小児科学会(AAP)では、子どもはカフェインを含む刺激物の摂取を抑制するよう注意喚起しています。
欧州食品安全機関(EFSA)も、2015年に行ったカフェインのリスク評価から、健康な成人の場合は1日あたり400mgまでなら健康リスクが増加しないと提示しました(習慣的な摂取の場合)。妊婦と授乳婦に関しては、胎児や乳児の健康リスクが増加しない上限量として、1日あたり200mgまでとしています。
カナダ、オーストラリア・ニュージーランドも、上記と同様に成人は1日あたり400mgを上限とすることを推奨しています。日本では目安が提示されていませんが、どの国にも大きな差はありませんので、下記の摂取量を目安にするとよいでしょう。
- 18歳以上の健康な成人:1日あたり400mgまで
- 妊婦、授乳婦:1日あたり200~300mgまで
これをたとえばコーヒー1杯150~200mlに換算すると、1杯あたりのカフェイン量が90~120mgですので、1日3~4杯程度までが目安となりますね(妊婦さんや授乳婦さんの場合は1~2杯程度)。紅茶や緑茶なども飲む場合は、トータルのカフェイン摂取量を考える必要があります。カフェインレスやノンカフェインなどの飲料も取り入れながら、カフェイン摂取量が多くなり過ぎないようにしましょう。
300ml以上入るマグカップで飲む場合は、2杯程度でも上限量を満たしてしまいます。
何杯飲むかより、量で考えるようにすると安心ですね。
カフェインが抜けるまでにかかる時間
カフェインを摂取すると血液中に取り込まれますが、そのままずっと体内に残り続けるわけではありません。時間の経過とともに少しずつ抜けていきます。では、カフェインが体から抜けるまでにはどのくらいの時間がかかるのでしょうか。カフェインが抜けるまでにかかる時間は、摂取したカフェイン量はもちろん、体質によっても変わります。
一般的には、血中のカフェイン濃度が半減するのは4〜8時間程度といわれています。半減期を4時間とした場合、下記のように推移していきます。
- 4時間後:50%
- 8時間後:25%
- 12時間後:12.5%
- 24時間後:1.6%
このように、体に取り込まれたカフェインが完全に抜けるには、1日以上の時間を要します。そして、摂取量が多ければ多いほど、抜けるのに時間がかかってしまいます。
摂り過ぎたカフェインを抜く方法はある?
摂取したカフェインが自然に抜けるまでには一般的に24時間以上かかるとお伝えしました。カフェインを摂り過ぎると、体からなかなか抜けず覚醒状態が続いて眠れなくなったり、神経過敏によるさまざまな症状が出たりして、抜けきるまで辛い状態になってしまいそうですね。では、意図的にカフェインを抜く方法はあるのでしょうか。
カフェインを摂り過ぎてしまった場合に少しでも早く抜くことができたら、体への悪影響をある程度は防げるかもしれません。カフェインを抜く方法があるのか、見ていきましょう。
水分の摂取
カフェインには利尿作用があることをお伝えしました。利尿作用が活発になっているときに水分を積極的に摂ることで、尿がより多く出てカフェインの排出が促される効果が期待できます。一気に大量の水を飲むのではなく、時間をかけて少しずつこまめに水分補給をするのがポイントです。
カフェインの過剰摂取で神経が過敏な状態になり、気持ちが高ぶりすぎたり不安になったりしたときも、水を飲むと状態が落ち着く可能性があります。劇的にカフェインが抜けるわけではありませんが、利尿作用の促進や精神を鎮めるという意味で、水分の摂取は有効なのではないでしょうか。
症状を和らげる方法
また、カフェインは過剰摂取により、カリウムやマグネシウムの吸収を阻害し、排泄を促してしまうといわれています。カリウムもマグネシウムも神経系に関わる働きをする栄養素ですので、不足すると神経系に悪影響が出てしまいます。そのため、カリウムやマグネシウムを摂取することは、カフェインを抜く方法ではないものの、症状緩和に役立つかもしれません。
- カリウム:昆布・ひじきなどの海藻類、切り干し大根、きのこ、大豆など
- マグネシウム:昆布・ひじきなどの海藻類、ナッツ類、大豆など
症状が重い場合は受診を
カフェインの過剰摂取により吐き気や頭痛、呼吸が乱れるなどの症状が続く場合は、自己判断せずに受診しましょう。カフェインを抜く方法や症状を和らげる方法は、確実なものではありません。状態が悪いのに自己流の対処法で留めるのは危険です。水分補給などで改善できないときは、病院に行きましょう。
中毒症状が悪化して死に至ったケースもあります。そのような重篤化を防ぐためにも、カフェインの摂取量には十分な注意が必要です。自然に抜けるのにも時間がかかり、意図的に抜くことも簡単ではないカフェイン。取り返しのつかないことになる前に、摂取量が適切か判断することが大切なのです。
コーヒーやお茶からカフェインを抜く方法
体からカフェインを抜くことは難しいため、日頃から過剰摂取しないようカフェインの少ない飲み物を飲むことも選択肢に入れましょう。市販品やカフェなどで提供されるコーヒーやお茶にはカフェインレスやノンカフェインのものがありますね。これらは特殊な方法により作られています。コーヒーの場合、主に3つの方法でカフェインを抜いているそうです。
- 有機溶媒抽出:コーヒー豆に有機溶媒(ジクロロメタン)を通して抽出する方法(※日本では禁止)
- 水抽出:豆を水に浸してコーヒー成分を抽出後、水からカフェインを除去して再度残った成分を豆に戻す方法(豆から抽出した水に有機溶媒を使用するため直接豆に薬品が触れず比較的安全)
- 超臨界流体二酸化炭素抽出:圧力と温度を高めた二酸化炭素(気体・液体の性質を兼ねた状態)を豆の内部に通してカフェインを除去する方法
それぞれ長所と短所がありますが、風味がより損なわれにくいのは超臨界流体二酸化炭素抽出を用いたものといわれています。カフェインレスやノンカフェインの飲み物なら、就寝前や妊娠中、授乳中でも安心して飲むことができますね。
お茶は水抽出が効果的?
カフェインレスコーヒーは特殊な技術でカフェインを抜いていますので、一般家庭で作ることは難しいです。一方、お茶の場合は煎れ方を工夫することで、カフェイン量を抑えられます。
80℃のお湯で2分間溶出させた緑茶と比較すると、10℃で30分間溶出させた緑茶はカフェイン量が35%程度だったという研究報告(※)があります。30分の溶出時間なら、お茶のうま味成分のテアニンは水出しでも100%確保できるそうですよ。さらに、0℃ほどの低温にするとよりカフェイン溶出量が少なくなります。
このように、家庭で緑茶などを飲む際は、水出しにすることでカフェイン摂取量を抑える方法もあります。ただし、溶出時間が長引くとカフェイン量が増えてしまいますので、茶葉を入れっぱなしにしないようにしましょう。
※参考元:農林水産省 緑茶の美味しさと機能性を両立する「水出し緑茶」
まとめ
カフェインは適量の摂取により集中力アップやリフレッシュ効果が得られますので、活動に役立つ成分といえます。その一方で、摂り過ぎると神経が過敏になり健康に悪影響を及ぼすことがあるため、摂取量には注意が必要です。体内のカフェインが完全に抜けるには、24時間以上かかります。摂取量が多いとさらに抜けにくくなるといわれています。
水分の摂取でカフェインの排出をある程度促すことはできますが、体から迅速かつ確実にカフェインを抜く方法は見つかっていません。そのため、日頃からコーヒーやお茶類、栄養ドリンク等を摂取する習慣がある方は特に、ご自身のカフェイン摂取量を把握し、摂り過ぎないよう気を付けることが大切です。1日あたり400mgまで(妊娠中や授乳中の方は200~300mgまで)を目安に、ほどほどの摂取を心がけましょう。
- カフェインは神経鎮静作用を妨げることから眠気覚ましなどに有効だが、摂り過ぎると悪影響が出る
- 水分補給で排出を促したり、ミネラル補給で過剰摂取による症状を和らげたりすることはできるが、体からカフェインを抜く方法は確立されていない
- カフェインの摂取は健康な成人の場合で1日あたり400mgまでを目安に、過剰摂取しないよう心がけよう
記事の監修
平井 杏奈
管理栄養士・オンラインフードクリエイター
食に関わる資格を活かし、美容エステサロンで体調や減量に悩まれる方へ食事指導を担当。
その後、糖質オフやナチュラルな食品を中心として取り扱う飲食事業で商品企画や開発などを経験。
現在は、「安定した豊かな心とからだの健康を保つ食事」を広めるため、オンラインフードクリエイターとして独立。
日々、仕事や家事・子育てなど今を忙しく生きる全ての方へ向けた、食に関する記事の執筆やレシピ監修などの活動をしている。