池田 護(いけだ まもる) 「Fleur en Clair」店主
お花を通してストーリーが生まれるお手伝いをしたい
店主の思い入れのある地、神奈川県横浜市保土ヶ谷駅西口のほど近くにある「Fleur en Clair(フルール アン クレール)」。
スタイリッシュな外観は、看板がないとお花屋さんだとわからないかもしれせん。それもそのはず。「光り輝く花」の名を冠したお花屋さんは、洋服屋さんと合同店舗。扉をあけると、美しく鮮やかな花々が出迎えてくれます。
Fleur en Clairの店主を務める池田護さんに、お花にかける思いやお花を飾る楽しみ方をお伺いしました。
留学先で出会ったお花屋さんに感動して、お花の世界に
実は、祖父が海運会社の船長だったこともあり、高校生になる前から船乗りになりたかったんです。ただ、商船大学の入試に失敗してしまって。浪人しようと思った頃に、たまたまイギリスの大学の奨学金募集を見つけました。
小学生の頃から英会話を習っていたので受けてみたら合格して。それで、イギリスに留学したんです。
留学先で目にしたお花屋さんが、お花に興味を持ったきっかけです。
馬車を模したお花屋さんだったんですが、お花を売っているスタッフさんが凄く楽しそうにお花を売っていたんです。お花を受け取ったお客様もみんな笑顔で、幸せそうで。
「よし、お花をやろう!」って大学を辞めて。お花の学校に入るために一時帰国をして稼いでからロンドンに戻りました。
ロンドンでお花の資格を取得
ロンドンには花の国家資格(NVQ)があります。国家資格の取得に対応している学校で、LV3までの基礎範囲を取得しました。水揚げの仕方や仕入れ方法などを学び、近所のお花屋さんで無料で実習をさせて頂きました。
ロンドンのフローリストは、若い時はフリーランスで活動される方が多いんですよ。繁忙期に有名店で働いて、推薦状をもらってどんどん有名店を渡り歩くんです。
日本はお花に関する文化は古いですが、海外ではお花がより密接に生活に関わっています。女性だけではなく、男性がお花を持って街を歩く姿も良く目にします。
また、フローリストも職業として確立されているという違いがありますね。
独立開業して、保土ヶ谷に店を構える
複合ビジネス施設にあったお花屋さんで、グランドオープンから8年間店長を務めていたんです。残念ながら3.11の煽りで撤退が決まってしまいました。
調度その頃に、道ですれ違った方が持っている花束が目に入り、「やっぱり自分が作る花束で喜んで頂きたい」と強く思い、僕をお花屋さんとして育てて頂いた保土ヶ谷で独立しようと思いました。 お店を開いたのは、2012年です。
コロナ禍以前は、週末に軽井沢の結婚式のお手伝いをしていたのですが、不在時はお客様をお断りしていて…。アルバイトを雇おうかと検討したのですが、立ち上げから「Fleur en Clair」を育ててくださったお客様に、普段とクオリティーの違う物をご提供したくなかったので、不在時はやむを得なくお断りしていました。
そんな時にたまたまご縁があって、お洋服屋さんと「一緒にやったら面白いね」って話になったのをきっかけに合同店舗になりました。固定費を下げたかったのもありますし、僕が不在時でも事前にご連絡を頂ければお客様のご要望にお応えすることができますし、ご迷惑をかけないで済むようになるのも良いなと思いました。
美しい花たちが多くの人の心をひきつける
コロナ禍以前は、ブライダルのご要望も多かったのですが今は大分減りました。法人の企業の方からは、冠婚葬祭や卒業式などのハレの日のご注文を頂きます。
店舗には、地元の方を中心に沢山の方が足を運んでくださいます。Instagramの更新を頑張っているので、それをみて来てくださる方も多いです。
教室も開催していて、マンツーマンでレッスンを実施しています。カリキュラムはフリーなので、お免状の取得やブーケの制作など、ニーズにあわせて回数を決めています。大人数だとわからなくても聞けない・言い出せない方もいらっしゃるので、参加者は「多くてもお友達2人程度」とさせて頂いています。
お花を通して何かひとつでもストーリーが生まれて欲しい
お花は1年経過しないと1周しません。その時の気分によって、飾りたい場所や本数も変わってくると思います。
「テーブルの上に飾る」と言う固定概念を捨てて欲しいです。
お花を買った帰り道に、「今日はこことここに飾ってみよう」とか、「今日はこの器を使おう」など、ウキウキして頂きたいんです。
そのために先ずは僕たちが様々なご提案をしなければならないと思います。
僕は、お花を通して何かひとつでもストーリーが生まれて欲しいんです。
そうすることによってお花が光り輝き出すと言う信念を持っていて、店名も「光り輝く花」の意味を持つ「Fleur en Clair」と命名しました。
お花を買ったときの高揚感を大切にして欲しい
僕が手がけたお花によって、ストーリーが生まれるのって本当に素晴らしいことだと思っています。
例えば、結婚式のご要望では様々な仕掛けをご提案しています。
新郎様が披露宴の中でのサプライズ演出として新郎様一人でお二人に縁のあるところを訪れ、ビデオを制作されました。その場所場所で一輪づつお花を集め、ビデオが終わったらそのお花をブーケにして、新婦様にお渡ししました。
普段使いのお花もやっぱり買った時のトキメキとか、飾った時の胸の高鳴りを大切にしたいですよね。そのために、お客様にお渡しする際には英字新聞に包んで非日常を演出しています。
お花に触れることをきっかけに、広がっていく世界がある
花のある生活は、心が豊かになりますよね。そういうことを伝えて、定着させていきたいですね。お1人でもご家族がいらしても、おうちにお花が1輪でもあると全然違うんです。気持ちのゆとりを大事にして、花のある生活の楽しさを実感して実践してもらいたいですね。
お花は年齢に関係なく、シニアからスタートなさる方も多いんです。お花に触れると写真を撮りたくなりますし、そうすると今度は写真の勉強をしたり、折角撮った写真を見てもらうためにInstagramを始めたり…。どんどん世界が広がっていくんです。
「花のある暮らし」を提案していくのも大事な仕事
僕は、生花は命があるので美しいと感じます。生花には季節がありますが、毎年沢山の新種がでているんです。そうした知識を自分でアップデートして、お買い上げいただいたお客様にお伝えしています。
お花を売るだけではなく、「提案をしていく」のが僕の仕事だと思ってるんです。
お花を飾るのはテーブルの上だけに限らないで良いですし、色んな飾り方も提案していきたいですし、知識もお伝えすることでより長く楽しんで頂きたいです。
お日様が当たると水温があがるので、お花は水を飲みだすんです。夏は気温が高いから、水を飲む速度が速くなるのでお花が早くひらくとか。こうしたことを知っていると、例えばトイレなら寒いから長持ちするとか分かる様になります。
最近は輸入のお花を目にする機会も増えてきましたが、輸入のお花も取り扱いは変わらないですし、時期によりますが、輸入のお花でも長く楽しめるものもあります。
それと、お花を飾ると花器が欲しくなるんですよ。素敵な器があると、「何処に置こうかな」って置く場所も考えますよね。お花を買うとこうした広がりが生まれるのも魅力のひとつです。
Instagramには美しいお花の写真が沢山
お客様には、僕のビジュアルのギャップも含めて、お花を楽しんでいただける様に心がけています。花の持つ魅力をもっと沢山の方に知って頂きたいです。
そのために、InstagramやFacebookにも力を入れています。特にInstagramには、僕の手掛けた作品が沢山掲載されているので、是非見にきてください。
池田 護(いけだ まもる)
「Fleur en Clair」店主
留学先でお花に興味を持ち、ロンドンのお花の学校に通った後、修業を経て、2012年に「Fleur en Clair」を保土ヶ谷に開店。
「お花を通してストーリーが生まれるお手伝い」をしている。