腸内フローラを整える方法とは?腸内環境を改善して健やかな毎日を
記事の監修
小玉 奈津実
管理栄養士
管理栄養士、食品表示検定中級を保持。
管理栄養士を取得し「17年目」で、職歴としてはサプリメントの研究・商品開発や外食チェーン店のメニュー開発、老人保健施設での献立作成や栄養価換算に携わってきた。
現在はフリーの管理栄養士として活動しており、食・栄養やサプリメント関連の執筆や監修、オンラインの栄養指導など、実績200件以上をもつ。
モットーは「コミュニケーションを大切に」「エビデンスに基づいたアドバイス」である。身体を作る「食」の重要性を、わかりやすく丁寧にお伝えすることが使命と感じている。
皆様は「腸内フローラ」をご存知ですか?腸内環境を整えるには、腸内フローラの状態を改善することが大切です。
そこで本記事では、腸内フローラに関する基本的な知識や、腸内フローラの状態を改善するメリット、そして腸内フローラを整える具体的な方法について解説いたします。
腸活に取り組もうとお考えの方や、腸内環境の改善を目指している方は、ぜひこちらの記事を参考にしてみてください。
- 腸内フローラについて知りたい人
- 腸内フローラの整え方を知りたい人
- 腸活を始めようと思っている人
目次
腸内フローラとは?
健康的な毎日を送るためには、腸内環境を見直すことが大切です。腸内環境の改善には、「腸内フローラ」について良く知る必要があります。
こちらでは、腸内フローラとは何なのかについて、基本的な知識を解説いたします。腸内フローラについて知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
腸内に存在する細菌の塊のこと
体内にはおよそ11万種以上の細菌が存在しています。そのうち大腸には3万3,000種、個数にすると1,000兆個の細菌が棲んでいます。
大腸に存在する細菌は種類ごとに塊になって腸の壁に隙間なくびっしりと張り付いています。その様子がまるで品種ごとに並んで咲くお花畑に見えることから、「腸内フローラ」と呼ばれているようになりました。
腸内フローラの正式名称は正式な名称は「腸内細菌叢」です。
腸内フローラの理想的なバランスとは
腸内フローラを構成しているのは、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類に分類される細菌です。
善玉菌の代表的な細菌は、乳酸菌やビフィズス菌です。これらの細菌は体内でビタミンを作り、消化吸収をサポートします。そのほかにも、感染防止や免疫力アップ、老化防止に効果的であると言われています。
悪玉菌の代表的な細菌は、ウェルシュ菌やブドウ球菌、大腸菌です。悪玉菌の数が増加すると、腸内に有害物質やガスが作られやすくなってしまう場合もあります。便秘や下痢など、お腹の調子を崩す原因にもなりうるため、ケアが必要です。
日和見菌は、善玉菌でも悪玉菌でもない腸内の細菌です。日和見菌は状況によって、善玉菌の味方になるか悪玉菌の味方になるかが変化します。
腸内フローラの理想的なバランスは、善玉菌2割・悪玉菌1割・日和見菌7割であると言われています。腸内フローラのバランスが崩れると、悪玉菌が増加しやすくなるため、体に悪い影響を及ぼすリスクが高まります。
しかし、悪玉菌の数が少なすぎても、善玉菌の働きが弱くなってしまうため、食べ物の消化や吸収がうまくいかなくなる恐れが考えられます。
腸内フローラを改善するメリット
腸内フローラの状態を改善することによって、体にはどのような変化が現れるのでしょうか?こちらでは、腸内フローラを改善するメリットについて解説いたします。
腸活を始めようとお考えの方は、ぜひチェックしてみてください。
便通が改善する
腸内フローラの状態が整うと、善玉菌の働きが活発になり、便通が改善されます。
善玉菌の一種である乳酸菌は、腸内に生きたまま届き、たくさんの乳酸をつくることで腸の運動を活発化します。また、悪玉菌の増殖や定着を防ぎ、有害物質を吸着して体外への排出をサポートするはたらきもあるため、便秘や軟便でお悩みの方はぜひ、乳酸菌を意識的に摂取してみてください。
善玉菌を摂取して腸内フローラのバランスを整えることで、お腹の悩みが改善する可能性があります。
免疫力が高まる
腸は免疫のはたらきにおいて中心的な役割を担っています。免疫システムを持つ免疫細胞の約7割は腸に生息しています。
多様な細菌が生息している腸内は、細菌同士が協力し合い、健康的な腸内環境を保ってくれます。体内にウイルスや病原菌が侵入しても、腸に生息する細菌が戦ってくれるため、健康を維持することができるのです。
免疫力の向上には、腸内フローラのバランスを改善することをおすすめします。
睡眠の質が向上する
腸内フローラを改善することで、睡眠の質が向上すると言われています。
腸内フローラを含む腸内環境は人間の脳と相互に影響を及ぼしあっています。最近の研究では、腸内フローラのはたらきが弱くなると、睡眠期のノンレム睡眠が減少し、逆に活動期にはノンレム睡眠とレム睡眠の増加することが判明しています。
腸内フローラのはたらきが無ければ、本来睡眠をとるべき時間帯に脳のはたらきが活性化し、逆に活動が盛んな時間帯に睡眠をとってしまうといったように、昼夜のバランスが崩れてしまいます。
腸内フローラのバランスが崩れたり、細菌の種類が減少することで、睡眠の質が低下してしまう恐れがあります。質の良い休息をとるためには、腸内フローラの改善が必要です。
ダイエットにも効果的
腸内フローラは肥満とも関連性があります。食べる量は多くないのになぜか太ってしまうという人は、腸内の細菌の種類が少ないのかもしれません。
腸内細菌には肥満を抑制するはたらきを持つバクテロイデス類に属する細菌があり、これらは「痩せフローラ」と呼ばれます。肥満度が低い人の腸内には痩せフローラが多く存在していることが判明しています。
痩せフローラは脂肪の吸収を抑えながら同時に燃焼させる短鎖脂肪酸を作ります。短鎖脂肪酸は悪玉菌の増殖を抑え、大腸のバリア機能を高めて蠕動運動を促すなど、腸内環境の改善に欠かせない構成成分の一つです。
ダイエットを成功させるには、腸内環境を整えて必要な細菌の数を増やしてあげることも大切です。
腸内フローラを整える方法
次に、腸内フローラを整える方法について解説していきます。腸内フローラのバランスを整えることで、健康維持やダイエット効果を期待することができます。
腸内フローラのケア方法について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
善玉菌を含む食品や善玉菌のエサとなる食品を食べる
善玉菌を含む食品や善玉菌のエサとなる食品を食べることで、腸内フローラのバランスを整えることができます。
善玉菌を含む食品には、発酵食品や乳酸菌飲料があります。善玉菌を含む食材を食べることで、腸内の善玉菌の量を増やすことができます。しかし、食べた後の善玉菌は、腸内にある程度の期間は存在しますが、しばらくすると体の外へ排出されてしまうので、毎日継続的に食べることが大切です。
善玉菌のエサになる食品には、オリゴ糖や食物繊維を多く含むものが該当します。オリゴ糖や食物繊維を含む食品を食べることで、善玉菌のはたらきを活性化させることができます。
善玉菌を含む食品や善玉菌のエサになる食品を積極的に取り入れることで、便秘の解消などの効果を期待することも可能です。腸内フローラの改善には、食べるものに注意することも大切です。
悪玉菌を増やす食品を避ける
悪玉菌が過剰に増えると、腸内の腐敗を促進されてしまいます。便のにおいがきつくなったり、便通が妨げられるほかにも、肌荒れや免疫力の低下などのトラブルが発生するリスクが高まります。
腸内フローラを整えるには、悪玉菌を増やす食品を避けることも大切です。肉類や魚介類、卵、乳製品などに含まれている動物性たんぱく質や脂質の多い食事を繰り返すことで、悪玉菌が増加しやすくなると言われています。
バランスの良い食事をとり、腸内細菌の多様性を保つことで腸内フローラが改善します。悪玉菌の増加を防ぐには、偏った食生活に注意することが重要です。
自律神経の乱れを整える
腸と自律神経には密接な関わりがあります。緊張や不安などのストレスが原因で自律神経が乱れることで、お腹が痛くなったり便秘がちになってしまうなどのトラブルが引き起こされることもあります。
自律神経が整うことで、腸は正常にはたらきます。睡眠不足を解消し、ストレスを溜めないように意識して、リラックスタイムを設けることが大切です。
整腸剤を服用する
腹痛や便通の乱れなど、お腹の不調が気になるときには、整腸剤を服用して腸内フローラの乱れを改善する方法も有効です。
整腸剤には、さまざまな種類の乳酸菌やビフィズス菌が凝縮されています。お腹の不調が気になるタイミングで服用することで、腸内フローラのバランスを整えることが可能となります。
食生活の改善や生活習慣の見直しで不調が治らないときには、整腸剤を取り入れてみても良いでしょう。
腸内フローラのバランスが乱れる要因
次に、腸内フローラのバランスが乱れる要因を解説いたします。腸内フローラのバランスを乱す行動を把握することで、体の不調や気分の落ち込みを予防することも可能になります。
腸内フローラのバランスを乱す要因について知りたい方は、こちらの内容を確認してみてください。
食生活の乱れ
バランスの悪い食生活は、腸内フローラの乱れを引き起こす恐れがあります。食事をとる時間や食事内容にばらつきがあることで、腸のはたらきにムラが生じ、腸内フローラのバランスが崩れてしまうのです。
毎日3食をバランスよく食べ、善玉菌を含む食品や善玉菌のエサになる食品を積極的に取り入れることが大切です。また悪玉菌を過剰に増加させる肉類や魚介類、卵、乳製品などの食品は食べすぎないように注意しましょう。
食生活を改善することで、腸内フローラのバランスを整えることができます。
睡眠不足
睡眠不足は自律神経の乱れを引き起こします。自律神経は腸のはたらきをコントロールしています。交感神経が優勢になると、腸の蠕動運動が停滞し、副交感神経が優勢になると、蠕動運動が活発になります。眠っている間は、副交感神経が優勢になります。腸のはたらきを促すには、十分な睡眠が必要不可欠なのです。
自律神経が乱れると腸のはたらきのリズムが崩れ、便秘になったり、お腹をこわしてしまう恐れがあります。睡眠習慣を見直して、睡眠不足を解消することで、腸内フローラの乱れを防ぐことが可能になります。
就寝前はテレビやスマホを見ないように心がけたり、お気に入りの寝具などで心地よく眠れる状態を整えるなど、ぐっすりと眠れるような工夫を凝らすこともおすすめです。
運動不足
運動不足は腸内フローラのバランスの乱れを引き起こします。適度な運動は、腸内の善玉菌のはたらきを促します。また、体を動かすことで腸が刺激され、蠕動運動が活性化するとも言われています。
腸のはたらきを促すには適度な運動は欠かせません。苦しくない程度のウォーキングやジョギング、代謝を促進するストレッチなど、無理のない範囲で運動習慣を身につけることが大切です。
腸内フローラのバランスを整えるには、運動不足にならないよう注意しましょう。
過度なストレス
緊張やストレスが原因でお腹の調子を崩した経験はありませんか?過度なストレスは体に様々な影響を与えます。強いストレスによる過剰な反応が起きると、有害なストレス応答として心臓・血管系や中枢神経の機能にダメージを与えたり、免疫活性を低下させたりして疾患の原因になる場合があります。
特に、自律神経と深い関りを持つ腸は影響を受けやすく、ストレスによって交感神経が長時間刺激されると、消化機能が低下し、下痢や便秘といった症状を引き起こしてしまいます。
腸内フローラのバランスを整えるには、ストレスとうまく付き合っていくことも大切です。体がリラックスできるように、ハーブティーを飲んだり落ち着く音楽を聴くなどの工夫を凝らすこともおすすめです。
加齢による腸機能の衰え
年齢を重ねることで、腸機能も衰えていきます。加齢の影響により、腸は弾力性が失われ、伸びきったゴムホースのようになってしまうのです。
すると腸のはたらきも弱まり、腸内フローラも乱れやすくなります。加齢による腸のはたらきの弱まりを遅らせるには、善玉菌を含む食品や善玉菌のエサとなる食品を意識的に取り入れ、生活習慣を見直していくことが重要です。
規則正しい生活は、体の健康と活発な腸のはたらきをもたらします。健康な腸を長持ちさせるために、日々の習慣を改善していきましょう。
腸内フローラを改善する食事術
腸内フローラを改善する食事術についてご紹介いたします。食事の習慣や食事の内容を見直すことで、腸内フローラのバランスを整えることが可能です。
腸内フローラの状態の改善を目指している方や、腸活に挑戦しようとお考えの方は、ぜひこちらの内容を参考にしてみてください。
保存のきく発酵食品を冷蔵庫に常備する
腸内フローラのバランスを整えるには、乳酸菌やビフィズス菌、酵母菌、麹菌などの善玉菌を含む発酵食品を積極的に口にすることが大切です。発酵食品を食べることで、腸内フローラ内の細菌の多様性を活性化させる効果を期待することができます。
発酵食品は保存がきき、手軽に食べられるものが多い点も特徴です。例えば、しょうゆやみそ、みりん、麹などの調味料や、日本や甘酒などの飲み物、ほかにも鰹節やぬか漬け、キムチ、ヨーグルト、納豆、チーズなどの食品が発酵食品に該当します。
納豆やチーズ、ヨーグルトなどの食品は、単体でも食べやすく、朝食や夕食に追加する1品として手軽に口にすることができます。また料理に味噌汁を添えたり、しょうゆやみりん、みそを使用して料理することで、発酵食品を口にすることも可能です。
保存のきく発酵食品を常備しておくことで、意識しなくとも善玉菌を含む食品を食べることができます。腸内フローラの改善を図りたい方は、ぜひ発酵食品を日々の食卓でたくさんとりいれてみてください。家族の健康ケアにもおすすめです。
和食や野菜の多いメニューを意識する
腸内フローラの改善には、善玉菌を含む食品や、オリゴ糖や食物繊維などの善玉菌のエサとなる成分を含む食品を意識的に取り入れていくことが大切です。
実は、和食には善玉菌を含む食品や善玉菌のエサとなる成分を含む食品が多く使用されています。例えば、和食の定番である味噌汁には、みそや大豆、海藻や根菜類などが含まれており、腸活にぴったりの食材です。ほかにも、ぬか漬けや納豆、きんぴらごぼうなどの和食メニューも、腸内環境の改善に適しています。
外食やテイクアウトの食事をとるときには、野菜が多いメニューや和定食を選ぶことをおすすめします。また食事にわかめなどの海藻類が入った味噌汁をプラスすることで、腸内環境の改善を目指すことが可能です。
ほかにも、タマネギやこんにゃく、ひじきなど、腸活に適した食材を使用したメニューを1品取り入れることで、腸内フローラのバランス改善に適した食事を実現することができます。
毎日の食事で少しの工夫を取り入れることで、腸内フローラの改善を目指すことができます。ぜひ、腸内フローラの改善に適した食材を調べ、食卓に取り入れてみてください。
まとめ
今回は、腸内フローラのバランスを改善する方法について解説いたしました。腸内には多数の細菌が存在しています。その種類を増やし、バランスを整えることで、健康的な腸内環境が実現します。
腸内フローラのバランスを整えるには、食生活や睡眠習慣、運動習慣を見直すことが大切です。生活習慣を見直すことで、腸のはたらきが促され、お腹の悩みを解決することができます。
腸内フローラの改善を目指すことで、体や気分の不調を改善することも可能です。なんとなく体が重たいと感じるときや、気分が落ち込みやすいときには、腸に良い食品を意識的に取り入れてみてください。腸内フローラの改善は、あなたの健やかな日々を後押ししてくれるでしょう。
- 腸内フローラの理想的なバランスは「善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7」
- 腸内環境の乱れによって、体や気分の不調が引き起こされることも
- 腸内フローラの改善には、食生活や睡眠習慣など、生活習慣の見直しが有効
記事の監修
小玉 奈津実
管理栄養士
管理栄養士、食品表示検定中級を保持。
管理栄養士を取得し「17年目」で、職歴としてはサプリメントの研究・商品開発や外食チェーン店のメニュー開発、老人保健施設での献立作成や栄養価換算に携わってきた。
現在はフリーの管理栄養士として活動しており、食・栄養やサプリメント関連の執筆や監修、オンラインの栄養指導など、実績200件以上をもつ。
モットーは「コミュニケーションを大切に」「エビデンスに基づいたアドバイス」である。身体を作る「食」の重要性を、わかりやすく丁寧にお伝えすることが使命と感じている。