薬膳とは?基本の考えをとり入れて体の不調をケアしよう
記事の監修
田澤 美奈代
健康食品・ナチュラルコスメ販売員
【保有資格】
・化粧品検定1級
・化粧品成分検定1級
・アロマテラピー検定1級
・やさしい薬膳・漢方 終了証取得
・リンパケア講座 終了証取得
健康食品・ナチュラルコスメ販売員として働きながらフリーライターとして活動中。
お客様のお悩みに寄り添い、よりよい解決策をご提案。安全で健康な食生活が、肌の美しさに繋がることを実感し、知識と経験を深める。食でのインナーケア・肌のスキンケア・香りのアロマケアで、トータルバランスを整えるアプローチが強み。
中国の伝統医学の考えに基づき、日々の食事を通じて健康を目指す「薬膳」。その時々の体調に合わせて食材を選ぶことで、体の調子を整えることができると期待されています。
薬や科学の力に頼らずに健康を維持することができる薬膳の考えは、現在も多くの人々に支持されています。そんな薬膳が、自宅でも手軽に実践できるということをご存知でしたか?
こちらの記事では、薬膳の考え方やおすすめの食材について詳しくお伝えいたします。薬膳食を始めてみたいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
- 薬膳について知りたい方
- 食事を通じて健康的な体づくりを促したい方
- 体の不調に効果的な食材を知りたい方
目次
「薬膳」とは
皆様は「薬膳」という考え方についてご存知ですか?日々の生活に薬膳の考えを取り入れることで、体や心の調子を整えることができます。
こちらでは、薬膳の基本的な考え方や、日々の生活における自然な取り入れ方についてお話いたします。薬膳に興味がある方は、ぜひこちらの内容を確認してみてください。
中国の伝統医学に基づいた食事
薬膳とは、中国の伝統医学の教えに基づいて行う食事方法のことです。その時々の体に合わせた食材を使用することで、体調を自然に整えることを目的としています。
西洋医学では、病気の患部に注目して診断し、投薬治療で早く治すことを目指します。しかし、東洋医学の考えを食に落とし込んだ薬膳は、体全体のバランスや患者の体質を診て、普段の生活の中から病気にかからないよう予防をしていくという考えがベースとなってます。
季節や体調に合わせた食材を、日々の食事を通じておいしく体に取り入れることで、体を内側から整えていくことが薬膳の根幹となる考えです。薬膳を実践することで、健康の維持や精神の安定、美容の促進などの効果を期待することが可能となります。
薬膳には、「陰陽」「五行」「五味」「五性」の考えがあり、これらを理解することで体の調子を乱さないための食生活を送ることができるようになります。それぞれの考えの詳細については後述していくため、薬膳を日々の食事に取り入れたいとお考えの方は、ぜひチェックしてみてください。
現代の健康維持にも効果的
中国の伝統医学に基づいた食事法である薬膳ですが、実は現代の食生活にも薬膳の考えを取り入れることが可能です。薬膳は、季節や体調に合わせた食材をおいしく取り入れるという考えがベースとなっています。そのため、スーパーで購入出来る野菜・肉・魚・調味料だけでも、薬膳料理を作ることができるのです。
薬膳料理は、「これを食べれば必ず体調が回復する」というように、万人・万病に向けられたものではありません。個々人がそれぞれの体調と向き合って、その時々に必要とされる食材を用いて作られるものです。例えば、冷えが気になるときには体を温めるものを、逆に火照りやすいときには、熱を逃がすはたらきを持つ食材を取り入れるといった、体調に応じた食材選びが必要になります。
季節に合わせた旬を迎えた食材を使うことで、気候に合った食材のパワーを体内に取り入れられるとも考えられています。旬の食材にはうまみと栄養がぎっしりと詰まっています。上手に活用することで、免疫力を高めるはたらきを期待することができるでしょう。
季節や体調に合わせてベストな食材を取り入れる薬膳は、現代でも多くの人から支持されている健康法の一つなのです。
薬膳食の特徴とは
次に、薬膳食の特徴についてお話します。薬膳を日々の食生活に取り入れるには、薬膳食の目的や、使用する食材が持つ特徴やはたらきについてしっかりと把握しておくことが大切です。
薬膳に挑戦してみたいとお考えの方は、ぜひこちらの内容を参考にしてみてください。
体質に合わせて食材を選ぶ
薬膳食は食べておいしさを楽しむことだけが目的ではありません。食材がもつはたらきを活かし、冷えや食欲不振など、人それぞれの体の不調を整えて、健康を保つ食事こそが薬膳と言えるのです。
薬膳で用いられる食材はすべて、そのときどきの体調に合わせて選ばれます。食材を選ぶ指針となるのが、薬膳の基本的な考え方の一つである「陰陽」です。陰陽とは、昼と夜の移り変わりから生まれた考え方です。この考えを食材に当てはめ、選んでいきます。
「陰」は夜で、暗い、冷たい、じめじめ、重たいなどのイメージです。反対に「陽」は昼で、明るい、温かい、軽い、乾燥などのイメージが当てはまります。体の冷えが気になるときには陽の食材を、逆にほてりや渇きを感じるときには、陰の食材をとると良いとされています。
卵・小魚・梅干し・味噌 など
牛乳・トマト・ピーマン・きのこ・青菜 など
薬膳の考えにおける健康は、陰と陽のどちらにも傾かず、バランスがとれた状態のことを指します。自身の体調に問いかけながら、不足しているものを食材の力で補うことが大切です。
旬の食材を豊富に使う
食べ物には、体を冷やしたり温めたりする「五性」と呼ばれる性質があります。五性には、体を温める「温性」、体を極端に温める「熱性」、体を冷やす「涼性」、体を極端に冷やす「寒性」、体を温めも冷やしもしない「平性」という5つの性質が含まれます。
うるち米や豚肉など、普段からよく口にする食材は「平性」に分類されます。その時々の体調に合わせて、「温性」や「涼性」の食材を取り入れることで、体の調子を整えることができます。
旬の食材には、その季節に必要な栄養・性質を持つものが多いです。夏が旬のトマトやスイカ、バナナなどの食材は、体を冷やすはたらきを持つ「寒性」に分類されます。寒い時期に旬を迎えるたまねぎやみかんは、「温性」の食材です。体を温める生姜やシナモンを、お料理や飲み物に足すのも簡単でおすすめです。薬膳の実践には、これらの食材を上手に活用することが大切です。
季節ごとの不調にお悩みの方は、ぜひ意識的に旬の食材をとり入れてみてください。
不調な部位ごとに食材を使い分ける
薬膳の考えにおいて、体が健康な状態とは、偏りがなくバランスが整った状態を指します。冷えやほてりなど、体の調子に異変を感じた時には、それぞれの悩みを改善するはたらきを持つ食材を使用してみてください。
また、特定の部位の調子が優れないときには、「五臓」と「六味」の考えを参考にしてみることもおすすめです。
五臓とは人間の臓器の中でも「肝・心・脾・肺・腎」を指します。六味は「酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味・淡味」を意味します。
- 「肝」の調子が悪いときは、自律神経が乱れがち。
「酸味」食材 → 梅干し・トマト・レモン - 「心」の調子が悪いときは、食欲がなく、精神面が乱れがち。
「苦み」食材 → ゴーヤ・セロリ・アスパラガス - 「脾」の調子が悪いときは、疲れやすくなりがち。
「甘味」食材 → カボチャ・トウモロコシ・リンゴ - 「肺」の調子が悪いときは、冷えやすくなりがち。
「辛味」食材 → ショウガ・ニンニク・ネギ - 「腎」の調子が悪いときは、便秘や肌の調子が悪くなりがち。
「鹹味」食材 → タコ・ひじき・ぬか漬け
薬膳は、体調に合わせてベストな食材を使用し、バランスを整える食事法です。食材が持つはたらきや役割をきちんと理解することで、食事を通じて健康を維持することができるようになります。
薬膳で体調を整えるときは、バランスを整えるという意識を持つことが重要です。特定の性質の食材の食べすぎは、逆に不調を引き起こしてしまうかもしれません。
薬膳食は体の巡りの乱れケアにもおすすめ
薬膳食は、女性特有の様々な不調をケアすることができます。自身の体と向き合って、食材から必要な栄養素を補うことで、悩ましい諸症状の改善を期待することができるでしょう。
こちらでは、薬膳を通じて体の巡りをケアする方法についてお話します。生理不順や肌荒れ、冷えなどの悩みを薬膳で改善したいとお考えの方は、ぜひこちらを参考にしてみてください。
女性ホルモンの乱れからくる不調を整える
女性ホルモン由来の体調の乱れには、様々な原因が考えられます。中でも、体の巡り不良が原因となる症状は以下の通りです。
- 痛みの強い生理痛がある
- 生理前は精神的に不安定になる
- 生理前後で食欲にムラが現れる
- 手足の末端が冷えやすい
- お腹や胸が張りやすい
女性ホルモンの乱れによる体調不良は、薬膳や漢方の考えに基づくと、「血」と「気」の巡り不良に大別することができます。「血」と「気」の両方が正しく巡っていれば、大きな不調に繋がりにくいです。
女性特有の体の悩みを薬膳で解決するならば、「血」と「気」の巡りを整えることが大切です。
「血」が巡っていない場合
痛みの強い生理痛や、手足の末端の冷えなどは、「血」の巡りが乱れが原因であると考えられます。血の巡りが滞ってしまうと、体は血行不良を起こし、全身の冷えや肩こり、肌荒れなどのトラブルを引き起こしてしまいます。
食生活を見直すだけでなく、毎日湯船につかって体を温めたり、適度な運動習慣を身につけるなど、生活習慣を見直すことも重要です。
血の巡りのケアに有効な薬膳食材には、タマネギ、青魚、味噌、シナモンなどが挙げられます。特にシナモンのようなスパイスは、コーヒーやミルクティーにトッピングするだけで手軽に取り入れることができるため、薬膳初心者の方にもおすすめです。
「気」が巡っていない場合
情緒の乱れや苛立ちやすさ、気が張った感覚などの悩みは、「気」の巡りの乱れが原因で引き起こされている可能性が考えられます。
薬膳や漢方における「気」とは、「生命エネルギー」や「体をコントロールする機能そのもの」を指します。つまり、「気」の巡りの乱れは、体の不調や精神的な疲労感の原因となるのです。
体が過敏になっていると感じた時や、呼吸がしにくい、休まらないなどの症状が出た時には、自分の体と心に向き合って、息抜きをすることが大切です。深呼吸をして「気」の巡りを意識してみましょう。
「気」の巡りを整える薬膳食材には、しそや大葉、パクチーなどの薬味のほか、香りのよい柑橘類やハーブティーなどが挙げられます。「気」の巡りを整えるには、心を落ち着けてリラックスすることが重要です。ほっと息をつけるような、自分に合った食材を探してみてください。
栄養不足は薬膳で補える?
「血」や「気」が乱れやすい人の中には、体質が虚弱であったり、日々の疲れから体力が消耗した人が多い傾向にあります。
薬膳とは、その時々の体調に合わせて必要な栄養を補う食事方法です。「血」や「気」の巡り不良を感じていない場合にも、薬膳を取り入れることでのちの不調を防ぐことが可能です。栄養バランスの乱れによる冷えや便秘などのトラブルは、薬膳を取り入れて、不足した栄養を補うことで改善することができます。
気になる不調がないときも、陰陽の考えをもとに、バランスを整えるように意識してみてください。旬の食材をたくさん使い、胃腸に負担をかけない食生活を続けることが大切です。
栄養不足や体のスッキリとしない違和感を覚えるときは、ぜひ薬膳を取り入れてみてはいかがでしょうか?
初心者にもおすすめな薬膳食材5選
体のバランスを整え健康維持を目指す薬膳は、気軽に実践しやすい健康法の一つです。食事を通じて健康を補助することができるため、家族の健康管理にもおすすめです。
こちらでは、初心者の方にもおすすめな調理しやすい薬膳食材を5つご紹介いたします。普段の食事にも取り入れやすい食材ばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。
1.かぼちゃ
体の冷えや胃腸の調子の乱れが気になるときには、「かぼちゃ」を使ったメニューがおすすめです。夏に旬を迎えるかぼちゃは、夏野菜の中では珍しい「温性」の性質を持つ野菜です。冷たい食べ物や体を冷やす食べ物を食べすぎて胃腸が疲れた時には、かぼちゃを食べてバランスを整えましょう。
かぼちゃには消化吸収を促すはたらきがあります。便秘やお腹のハリにお悩みの方もぜひ、かぼちゃをメニューに取り入れてみてください。
かぼちゃを利用した薬膳メニューの例としては、かぼちゃとあずきの柔らか煮や、かぼちゃと牛肉のあんかけが挙げられます。いずれもスーパーで手に入れやすい食材を利用したメニューとなっています。
薬膳から見たかぼちゃは、むくみケアにも効果を期待できます。むくみが気になる生理中や妊娠中、体に優しいむくみケアしたい時は、ぜひかぼちゃ料理を試してみてください。
2.穀物
小麦やハト麦、とうもろこしなどに代表される穀物類も、主要な薬膳食材の一つです。穀物の多くは気温の高い時期に旬を迎えます。
体から余分な熱を逃がしたり、水分代謝を良くするはたらきが期待されており、夏の暑い季節に取り入れることで、体のバランスを整えることができます。
普段の食事の白米を雑穀米や玄米、もち麦米に変えることで、体温のバランスを整えたり、消化機能を促進することが可能となります。
近年では、普段のお米に混ぜるだけで簡単に炊飯できるタイプの雑穀米やもち麦米なども販売されています。手軽に取り入れやすいという点も大きなメリットの一つです。
3.イモ類
じゃがいもやさつまいもなどのイモ類も、薬膳食材の一つです。「平性」の性質をもつじゃがいもやさつまいもは、普段の食事に取り入れやすい、体のバランスに影響を与えにくい食材です。様々な体質の人と相性が良く、家族全員の健康サポートにもぴったりの食材となっています。
薬膳の考えでは、イモ類は胃腸を温め、血行を促進するはたらきを持つとされています。手足の冷えが気になる方や、胃腸の弱りが気になる方は、積極的にイモ類を取り入れると良いでしょう。
また、薬膳効果を引き出すには、イモ類は焼いたり揚げたりするよりも、煮て食べることをおすすめします。煮物は油を使用しないため、胃腸への負担を軽減できます。温かい料理を口にすることで、体の冷えを予防することもできるでしょう。
4.豆類
大豆や小豆、黒豆などの豆類も薬膳食材の一つです。豆類は「平性」や「涼性」の性質を持つことが多く、体のバランスを大きく崩すことが少ないため、積極的に取り入れるべき食材です。
小豆には利尿作用があり、体の余分な熱を排出しつつ、むくみや黄疸の対策に用いられます。黒豆には腎機能を高める効果が期待されます。血液の巡りや水分代謝をアップすることができるため、「血」の巡りを整えたいときには、ぜひ取り入れたい食材です。
他にも、豆類には種類ごとに様々な効果がある重宝すべき食材です。普段の食事にも取り入れやすい豆類を用いて、薬膳メニューを用意してみてはいかがでしょうか?
5.スパイス
薬膳の世界では、スパイスは「生薬」として用いられてきました。スパイスには、肝機能を向上させたり、胃腸のはたらきを助ける効果を持つものが多く、未病を改善するにはぴったりの食材です。
スパイスはカレーや麻婆豆腐などの食卓に提供しやすいメニューにも使用されています。単体では刺激が強い味わいのものもあるスパイスですが、調理することで子どもから大人まで楽しめる料理に変えることが可能です。
また、スパイスの一種であるシナモンは毛細血管に働きかけ血行を促進し、体温を高める効果があります。コーヒーやお茶などの飲み物にトッピングするだけで手軽に取り入れることができるシナモンは、生理前後の血の巡りのケアにもぴったりの食材です。
体の冷えや血の巡りの不順を感じた時には、ぜひシナモンをはじめとしたスパイスを取り入れてみてはいかがでしょうか?
女性の体は「7の倍数」ごとに変化する
女性の体は「7の倍数」ごとに変化するという話をご存知ですが?中国に古来から伝わる『黄帝内経』という書物では、女性の体は7の倍数、男性の体は8の倍数で変化すると書かれています。
具体的には、以下のような変化が現れると言われています。
- 28歳:女性としての身体機能が最も充実する
身体の不調は現れにくいですが、血を補う食事をとるなどの対策を講じる必要があります。 - 35歳:老化を徐々に意識し始める
気血の停滞を感じ始めます。ストレスを溜めず、リラックスして過ごすことが大切です。 - 42歳:見た目に変化が現れる
体力の低下を感じ始めるほか、白髪やしわなど見た目にも変化が現れます。
体を冷やさないように意識しましょう。 - 49歳:閉経前後のホルモン変化を感じる
閉経を機に、女性ホルモンの乱れが生じることがあります。
血流を促す食材や、体を温める食材を取り入れてみてください。 - 56歳:ホルモンバランスが心身に現れる
情緒が乱れやすく、筋力も低下し、心身共に大きく変化しやすい時期です。
食生活を意識する以外にも、適度な運動を行い、十分な睡眠を確保するなど、規則正しい生活習慣を送るよう心がけてみてください。
年齢を重ねることで体に変化が訪れるのは当たり前のことです。変化に心と体を乱されぬよう、バランスを整えてあげることが大切です。
まとめ
今回は薬膳についてご紹介いたしました。薬膳はいつもどおりの生活の中にも取り入れやすい健康習慣の一つです。自分の体と向き合い、必要な栄養を補うことで、乱れにくい心と体を手に入れることができます。
薬膳は普段使用している食材でも実践することができます。食事を通じて健康維持を目指したい方や、家族の健康を守りたいとお考えの方は、ぜひ薬膳に挑戦してみてくださいね。
- 薬膳とは、体のバランスを整えるための食事方法
- 体の不調のサイン「未病」を改善
- 特別な食材を使用しなくても薬膳は実践できる
- 女性特有の悩みケアにも有効
記事の監修
田澤 美奈代
健康食品・ナチュラルコスメ販売員
【保有資格】
・化粧品検定1級
・化粧品成分検定1級
・アロマテラピー検定1級
・やさしい薬膳・漢方 終了証取得
・リンパケア講座 終了証取得
健康食品・ナチュラルコスメ販売員として働きながらフリーライターとして活動中。
お客様のお悩みに寄り添い、よりよい解決策をご提案。安全で健康な食生活が、肌の美しさに繋がることを実感し、知識と経験を深める。食でのインナーケア・肌のスキンケア・香りのアロマケアで、トータルバランスを整えるアプローチが強み。