ビルトン 育代(びるとん いくよ) 「Bilton Flower Design」オーナー
生花・造花・ドライフラワーの特徴を使い分けると、もっとお花が身近になります
徳島県徳島市にある「Bilton Flower Design(ビルトンフラワーデザイン)」は、完全予約制の高品質造花(アーティフィシャルフラワー)とドライフラワーの専門店です。
オーナーのビルトン育代さんは、イギリスを初め、世界約30か国を旅し、さまざまな経験を積み、幅広いジャンルで活躍されているフローリストさんです。
Bilton Flower Designのオーナーを務めるビルトン育代さんに、世界約30か国を旅して感じたことやイギリスのお花屋さんで働いたお話、完全予約制の店舗について、そしてお花やドライフラワーに関することなど、いろいろとお伺いしました。
30か国を旅したフローリスト
4〜5歳の頃から、おばあちゃんと一緒にお庭に水をやりに行ってお花に触れていました。それがとても楽しくてお花屋さんを志すようになりました。
「高校に入ったら、お花屋さんでアルバイトをしたい」と考えていたので、アルバイトが出来る高校を選んで入学しました。入学してすぐに、お花屋さんでアルバイトを始めたんです。
そして、高校卒業後上京をして、ブライダルやフラワースクールも運営している大手のお花屋さんで働き始めました。
「海外でフローリストとしてやってみたい」と思った時に、ワーキングホリデーとピースボートのポスターを見たんです。24歳の時にピースボートで、中学生の頃から興味があった貧困問題や国際問題なども勉強しながら、世界を旅しました。
ピースボートで世界を旅した時は、4ヶ月くらいで約17か国を訪問しましたが、その後もさまざまな国を旅して、訪れた国は約30か国にのぼります。
南極で体験した「無」音の世界
私の旅は観光ではなく、地元の方との触れ合いがメインで、特にアルゼンチンが楽しかったですね。
ピースボートでさまざまな国を訪れた際に、1冊のノートを持っていきました。そのノートには、現地の方々に「お花の絵」を描いてもらいました。その絵はとても興味深く、南に行くほどお花が大きくなるんです。面白いですよね。
今までさまざまな国を旅しましたが、その中でも一番記憶に残っているのは「南極」ですね。
船以外は360度、見渡す限り自然しかないんです。それって日本でも山の中とかに行けばあるとは思うんですが、聞こえる音が「無」なんです。
足を運んだのは夏でしたが、10日に1回ほどしか晴れない季節にたまたま晴れていて、風の音も何もない「無」。今まで生きてきた中で一番の「無」を経験しました。
7年間イギリスのお花屋さんで働く
各国のお花屋さんもたくさん見て回りましたが、私が興味があったのは花市場だったので、市場を見て回る方が多かったですね。
24〜26歳まで世界を旅していて、27歳からイギリスに7年間滞在しました。「イギリスに行くと良いって未来の自分が言っている」と占い師さんに言われて決めたんです。
その後、イギリスのワーキングホリデーのビザが取れたのでイギリスのお花屋さんで働くことができました。
イギリスは日本よりもお花が身近な存在で、金曜日にご主人が奥様にお花を送ったり、デートで彼女を待つ彼が、駅で花束を持って待っていたりするんですよ。素敵ですよね。
私が働いていたお花屋さんは、イギリスでも高級住宅街として知られているウインブルドンエリアのお花屋さんだったので、富裕層の方々のお引き立てもあり、週に1度ご自宅にお伺いしてお花を飾ったりしていました。
日本はいろいろなお花の種類を混ぜて活けることが多いですが、イギリスでは1種類のお花をドーンと活けるのが好きなお客様が多かったですね。
言葉は…、実は旅している時にはそこまで喋れなくて…。「ハングリー」とか簡単な言葉くらいでしたね。イギリスに滞在していた時も、会話には自信が無かったのですが、お客様の言っていることはなんとなく理解できたので、そこまで仕事に支障は無かったですね。
3年くらい経った頃にようやく喋れるようになったんですが、それまでは全然でした。
でも、腕だけは自信があったので、「喋れなくても私ならイケル!」って思ってましたけどね。(笑)
プライベートでレッスンも開催
イギリスでは、お花屋さんに務める傍ら、個人でレッスンを行っていました。
ケンブリッジ大学の女性教授から「私の先生になってください」とお声がけがあり、出張レッスンをスタート。生徒さんのご自宅で、アレンジメントなどを教えていました。
口コミで生徒さんが増えていき、最終的には40人位の生徒さんを教えていました。
完全予約制の「Bilton Flower Design」を開店
34歳の時に、家族で地元である徳島県に移住し、「Bilton Flower Design(ビルトンフラワーデザイン)」を開店しました。完全予約制で1時間1組だけで、1日7組限定のお店です。
ご要望をその場でお伺いして、その場で商品をお作りしてお客様にお渡ししています。
1時間って「長い」と思うかもしれませんが、私とお客様とでお話ししたり、店内のお花を眺めていたりすると本当にあっという間なんですよ。
コロナ禍もあり非対面での接客が求められ、LINEのTV電話を使用し、来店したような疑似体験ができる「オンライン来店」にも対応しています。
遠方の方にも好評で、ニーズが高まっています。
ご要望としては、3,000円くらいからのプレゼント用が多いですが、ご自宅用に合わせた数万円のオーダーメイドのご依頼もあります。ご自宅用でしたら、お花を置く場所の寸法を測ったり、写真を撮ったりしてもらい、そこに合うお花をオーダーメイドでご提案・制作しています。
帰国するまではずっと生花専門でしたが、Bilton Flower Designの開業当時は双子の子供がまだ2歳になる前でした。お花の管理がしやすいように、高品質造花やドライフラワーに注目しました。
完全予約制にしたのは、自分の時間をコントロールするためでもあります。育児と仕事を両立したかったんです。
高品質造花とドライフラワーの違い
高品質造花は、本物そっくりの厳選された人工のお花で、水や日光が必要なくお手入れが簡単です。日光の当たる場所に置かないよう気を付け、湿気や水濡れに注意すれば末永く楽しむことができますよ。
お店で取り扱っている高品質造花は、私が日本で一番品質が高いと思っているお花のみを置いています。
ここまで品質にこだわった高品質造花を使用したアレンジメントを店頭、またはオンライン接客でその場で対応する専門店は日本には少ないかもしれません。
ドライフラワーは、本物のお花を自然乾燥させているので、3ヶ月〜1年くらい楽しむことできます。直射日光と湿度の高い場所を避け、丁寧に取り扱ってください。
良い状態が続けば1年くらいは楽しめるのですが、業者は3ヵ月を推奨しています。ほこりが貯まっても簡単に払えないので、衛生面の問題が大きいのだと思います。
5月〜9月は湿気によってカビが生えやすかったり、虫が寄ったりします。それらドライフラワーの取り扱いや管理方法を知らない方も多いので、販売する際には長く楽しんでいただけるよう、丁寧に伝えるように心がけています。
それと、1年経って退色してしまったドライフラワーをまた持ってきてもらって、まだ使えるお花は活用してリアレンジしています。捨てるのって勿体ないし、リピートのきっかけにもなるんです。
お花にもトレンドがあるんですよ。お花のトレンドも、ファッション同様にヨーロッパから来ています。ヨーロッパで流行った1~2年後に日本に入ってくるイメージです。なので、常にフランスかイギリスのお花を意識していればトレンドはつかめます。
企業案件では、まだ日本にないものをご提案しないといけないので、ヨーロッパの流行などを参考にキャッチアップしています。
そしてドライフラワーにも季節感があるんですよ。生花を乾燥させてドライフラワーにするので、お花それぞれのドライフラワーの時期というのが自然と決まってきます。
例えば、アジサイは梅雨の時期に見頃を迎えます。美しい状態をドライフラワーにするので、アジサイのドライフラワーの時期は夏前頃になりますね。
お花に携わることで「大変だ」と感じることはない
私は、お客様がご要望なさった想像以上のモノを提供することを目指してます。
そうすることによって、驚きが感動になり、「またお願いしたい」というリピートに繋がるんです。
マジシャンみたいにお客様のご要望や好きなものが分かるんです。
お花に携わることで大変なことはないのですが、ビジネス的な人間関係に少し苦手意識を持っています。
帰郷して3年目くらいに大量の注文があって、その時に覚悟を決めて人を雇ってリソースを増やしました。人間関係に苦手意識があったので人を雇うことに抵抗があったのですが、実際は自分自身の仕事を任せられるようになり、凄く楽になりましたね。
今年の2月からは、姉も正社員として一緒に働いてくれています。そのおかげで、全部を安心して任せられるんです。
接客やオーダーメイドは私が対応し、雑貨屋さんなどに卸すお花は、私以外の社員でも作れる様に商品開発をして売上をあげています。
レッスンのご要望も臨機応変に
一般の方向けにプライベートレッスンを実施しています。一般の方向けのレッスンは、1時間2,000円と商品代金で作りたいものをお伺いして作成いただけます。
また、お花を仕事にしたい方へのフラワービジネスレッスンにも対応しています。ビジネスとして学びたい方には、1時間3,000円と商品代金でご対応しています。どんなことをしたいか聞いて、商品開発も一緒にしています。
一般の方とビジネスのレッスンのニーズは、半分ずつくらいでしょうか。
正直、自分自身のビジネスのノウハウを人に教える方は少ないかもしれませんが、それを教えたところでデザインや世界観は個々にしか創れないものなので、皆が皆「競合」にはなりえないと思っています。
私が死ぬときに、私が教えたことで生徒さんがやりたいことを仕事にし、生計を立てて幸せになる。その「幸せになるお手伝いができた」って思えるのが、私の幸せなんですね。
なので、ビジネス向けのレッスンでは、ノウハウはもちろん掛け率や仕入れ先、商品開発、ビジネスプランの相談までご要望にお応えしています。
もっとお花が身近になるように
お花って贅沢品なんですよ。自分に余裕がないとお花を置けない。凄く忙しくて家にいない方は、お花を飾っても全然楽しめないですよね。自分の余裕があって、それからお花に興味が出るのかなと思っています。
生花を置くことで潤いがうまれますよね。けれども忙しくてお世話ができない…。そんな方には高品質造花がおすすめです。高品質造花は半永久的で、こまめなお手入れが難しい方でも飾っていただけます。事務所で日光が当たらない場所、もしくは当たりすぎる場所にグリーンが欲しいとか、そういうニーズに対応できるのは高品質造花の魅力です。
私自身、事業で高品質造花とドライフラワーを扱っていますが、友達の家に行くときにはお菓子じゃなくて生花を持って行きます。複数で集まるとみんなお菓子を持ってくるので、そんな時に生花が良いなって思います。
お花の持つ特徴を知って、生花・造花・ドライフラワーを上手に使い分けをすると良いと思います。
フローリストとして広がる世界
人生の中で1度は、「ニューヨークでチャレンジしてみたい」と思っています。
ロンドンでは、世界的なトップスターやセレブリティのご自宅の装飾を手掛けていました。「本物」というものを知っている方に支持されることができたので、人種や雰囲気の全く違うアメリカのニューヨークで自分の腕や感性を試してみたいんです。
それと、オランダは世界中で1番大きな市場がある程お花が多い国なので、オランダのお花屋さんで働いてみたいですね。
あと、中学生のころから憧れていた芸術作品も手掛けてみたいんです。
ロシアの芸術家の方が発案したアートがあるのですが、それを極めるために修行をしています。形になったら世に出そうと思っています。
アートって「唯一無二」ですよね。
昔から、みんなと同じものには興味がなくて。お花に携わることもそうですし、絵とか物を作ったりすることも好きでした。
私は「お花にもアートにも触れていきたいな」って思っています。
フローリスト・アーティスト・いろいろな国際支援活動を考えているので、是非ご注目ください。
ビルトン 育代(びるとん いくよ)
「Bilton Flower Design」オーナー
幼い頃、祖母と水やりをした原体験から花に携わる仕事に。
世界約30ヵ国を旅し、フローリストとして7年間イギリスで活動し、完全予約制の高品質造花(アーティフィシャルフラワー)&ドライフラワーの専門店をオープン。フローリストとして多忙な日々を送りながら、幅広いジャンルで活躍中。