町 恵子(まち けいこ) 「フルリストヴィレ」店主
お花を眺めて「ゆっくりする時間」を持って欲しい
広島県広島市にある「フルリストヴィレ」は、店舗を構えずに、厳選した季節の新鮮なお花と自家栽培のフレッシュなハーブを使って、お客様のさまざまなご要望にお応えしている大人の女性のためのオーダー制のお花屋さんです。
店主を務める町 恵子さんは、パリのシャンペトルブーケに魅かれ、ナチュラルでありながら華やかな、そして品格のあるブーケを得意とするフローリストさんです。
お花だけでなく、心理学にも精通している町 恵子さんに、お花と自家製ハーブについて、大学院で学ばれた心理学とお花の関係、そしてお花を長持ちさせるための秘訣などをお伺いしました。
「好きなスタイルのお花を作りたい」と独立
大学生の時にデパートを歩いていて、通りかかったお花屋さんに置いてあったブーケの可愛さが忘れられなかったんです。それまではお花にあまり興味がなかったのですが、「束にしたお花って素敵だな」と思って、そこからお花に興味を持ちました。
大学卒業後は街のお花屋さんに就職したのですが、2年くらい働いた頃に運営するカフェに転属になったのを機に退職しました。
その後、学生の頃に学んだ心理学にまた触れようと大学院に進学し、大学院を卒業後は心理職の仕事に就きました。お花も好きですが、心理学にも興味があったんです。心理職の仕事をしながら、精神保健福祉士の資格を専門学校で2年通い取得しました。
結婚を機に心理職の仕事を退職し、3人の子を出産しました。
出産後、子供を育てながらお花屋さんでアルバイトとして働いていました。
でも、最後に働いていたお花屋さんで、「その色合わせはこのお店のスタイルではない」と言われてしまって…。「私の好きなスタイルのお花を作りたい」と思ったのが独立のきっかけです。
育児や家事もきちんとしながら自分が納得できる仕事をするためには、自分で仕事を作るしかないと思い、2021年末に「フルリストヴィレ」を立ち上げました。
「フルリストヴィレ」はフランス語で「町の花屋」
「フルリストヴィレ」というのはフランス語なんです。「フルリスト」が花屋で、「ヴィレ」は町。苗字も取り入れて「町の花屋」というネーミングです。
フレンチスタイルのブーケが好きなのでフランス語にしました。
注文が入ったらお花を仕入れて配達をしたり、美容院や税理士事務所などには定期的にお花をお届けしています。
店舗が無いので、ランニングコストが低く抑えられます。その利点をいかして、花持ちの悪い夏の期間は長めに休業したり、お客様の要望を伺った上で仕入れや収穫をしたりなど、私とお客様のお互いが、気持ち良くお花を共有できるような仕組みを作っていこうと思っています。
また、現在はコロナ禍でお休みしていますが、旬の新鮮なお花とリーンやハーブを使った、女性限定・完全予約制のフラワーアレンジメント教室も開催しています。
私にしかできないお花を届けたい
私にしかできないお花をお届けしようと思ったときに、若い頃にずっと勉強していた心理学をブーケに取り入れようと思いました。
お花やハーブってそのままでも十分癒されるものです。だけど、心理学的視点を踏まえてお花をセレクトしてお届けしたほうが、よりお花の価値が高まるのではないかと思います。
例えば大切な方へお花を贈る時、心理学的視点を取り入れると、どんな気持ちで贈るかによってお花の種類や色、雰囲気は大きく変わってきます。元気づけたいと思い贈るお花と、感謝の気持ちを込めて贈るお花では全然違うお花になります。
お客様のご要望を伺った上で、自分のセンスと感覚、心理学的視点をフル活用して、受け取る方のその時の気持ちにしっかりと寄り添うお花をお届けしていきたいと思っています。
自家栽培のハーブを使ったシャンペトルブーケ
私が一番好きなのが、「シャンペトルブーケ」です。シャンペトルというのは「田園風」という意味で、野原とかの草花を集めて束ねたようなグリーンが多めのブーケのことです。
元々、野菜を育てていた畑があって、ハーブも好きだったので野菜の隣で一緒に育てていたのですが、ハーブは強いからよく茂ってくれるんです。
お花屋さんを作る時にブーケに入れようと思って、栽培するハーブの種類を増やしました。
広島県は瀬戸内海に面していて、日本の中では温暖な気候です。冬は寒いし、夏は暑いですが、冬になって寒さや霜の影響で草花がダメになることはありません。そのため、夏ほど多くはないですが、寒い時期でもハーブが収穫できるんです。
畑で草花を育てるのにはすごく良い環境で、この広島県の気候があるからこそ、自家栽培ハーブを使ったアレンジメントが提供できるのだと思います。
ハーブの魅力
ハーブは丈夫で香りも良く、葉っぱも可愛いのでアレンジに向いているんですね。葉っぱを擦ると良い匂いがしますし、元々薬草なので強くてお手入れが楽。その上ハーブは、一度水が上がるとほかのグリーンより長持ちするのも魅力です。
ハーブのブーケのご注文を頂くこともあります。ハーブは小さなお花が咲いたりもするので、いろいろな形や色の葉っぱを組み合わせたり、少し実ものを入れてニュアンスを出すと、グリーンのみでも可愛いブーケに仕上がります。
ハーブは飾っていると、根っこが生えてくることがあるんです。根っこが生えると1~2ヶ月くらい楽しむことができます。根っこが生えた場合には花瓶でも良いですが、土に植えてあげるのも良いかもしれません。
ハーブを増やす時には、挿し木をする様に切って水につけて、根っこが出てきたら土に植えてください。
花を長く楽しむためのポイント
ハーブは季節や種類によりますが、2週間以上持つものもあります。水が濁ってしまうと花も草も水を吸わなくなってしまうのですが、夏は水が濁りやすいので枯れやすいんです。だから、こまめに水を変えてあげると持ちが随分変わりますよ。
グリーンが入っているブーケでもお手入れの基本はお花と一緒で、直接日光が当たらない、なるべく涼しい所に飾るのがオススメです。また、暑さ対策も大切なのですが、茎から水を吸うので水が濁る前に変えてあげることが大切です。
「花もち剤」という栄養剤を使うと持ちも変わってくるのですが、無い場合には「キッチンハイター」でも代用可能です。
キッチンハイターをお水に2~3滴入れると水が濁りにくくなって持ちも良くなりますよ。また、殺菌効果があるので、水の中でバクテリアが増えなくなるんです。私もやっているので是非試してみてくださいね。
新鮮なお花を使うことを心がけています
お花をお届けしたときにお客様が喜んでくださるのが一番嬉しいですね。
定期便・配達のご注文は、広島市の方限定です。新鮮なお花を使うことを心がけていて、ご注文を受けてから畑に収穫に行ったり、市場に行ったりしています。
定期便・ 配達用のお花は、その日の朝や前日に準備しているので、3日くらい前にはご注文いただけると嬉しいです。
今は「夏のお花の持ちをどう良くするか」を模索している最中です。
お花は生ものなので、冬に10日くらい持つお花でも、夏は3日位でしおれてしまうこともあるんです。それだと申し訳ないなって…。気温が暑い時期は、営業をお休みしても良いかなと思い、2022年の夏は、お花のお届けをお休みさせていただいています。お盆や季節の行事はあるので必要な方にはお届けしています。
定期便は、涼しくなってから再開する予定です。
定期便は、企業や事務所さんのニーズが高いです。
1年を通して色とテーマを決めていて、テーマとカラーに沿って季節のお花とその時に採れた草花を組み合わせてお届けしています。例えば2022年の5月は、ニュアンスカラーを主役にしてみました。複数の色味が混ざったようなあいまいな中間色は、色彩心理学的にも感覚的にも5月の気候にマッチして、私たちの心に優しく寄り添ってくれます。
四季を通じて色や花材に変化をつけて、それぞれの季節の草花を飽きずに楽しんでいただけるよう心掛けています。
「目の前のこと」を味わう良さをみんなに知って欲しい
夕焼けの空が綺麗だったり、目の前のお花が綺麗だったり…。
「目の前のこと」を味わう良さをみんなに知って欲しいんです。幸せの多くは「目の前にある」と私は思っています。
また、お花には眺めるだけでもたくさんの効果があります。
お花にはリラックス効果があるだけではなく、ネガティブな感情の抑制効果も期待できます。リラックス効果はよく知られていますが、更にはネガティブな感情の抑制効果も期待できます。
また、グリーンにはリラックス効果、ピンクは不安を和らげてくれて優しい気持ちにするなど、様々な色彩的効果もあります。香りにも自律神経系改善効果や疲労軽減効果、集中力・記憶力向上効果など、多彩な効果があるんですよ。
お花って凄く綺麗ですよね…。
美しさをより引き出して束ねることで、改めて「お花ってこんなに綺麗だったんだ」って気づいて貰いたいんです。
それと、今の時代って、婚活や妊活、終活など、みんな凄く頑張っていますよね。たまにはお花を眺めてゆっくりする時間を持つことで、植物の効果を享受して欲しいなと思います。
今後は「外にお花を活けに行きたい」と思っています。病院の待合室やカフェとか、自分が「あったらいいな」って思う所にお花を届けて行きたいですね。空間に合わせてお花をディスプレイしていきたいんです。
季節のお花と自家栽培ハーブをふんだんに使って、心を込めて、丁寧に束ねたお花をお届けします。
ホームページの問い合わせフォームから、お気軽にご連絡ください。
町 恵子(まち けいこ)
「フルリストヴィレ」店主
お花屋さんの店頭に置いてあったブーケの可愛さが忘れられずお花に興味を持つ。大学で心理学を学んだあと、お花屋さんに2年務めて再び大学院へ。
結婚を機に心理職の仕事を退職。育児中にお花屋さんでアルバイト。
2021年、自宅で「フルリストヴィレ」をオープン。