吉本 道正(よしもと みちまさ) 「The Plants 」オーナー
ジャンルに関係なく、ライフスタイルの中に溶け込んでいける存在を目指して
奈良県磯城郡にお店を構える「The Plants(ザ・プランツ)」。奈良県天理市にあるドライフラワーや植物を扱う「The Plants 天理店(ザ・プランツ てんりてん)」とは姉妹店です。
The Plantsのオーナーを務める吉本 道正さんは、ジャンルにとらわれることなく、お花や植物を使って多彩なコラボを手掛けています。
個人向けの販売だけではなく、生花の仲卸やインテリアアイテムの制作などを手掛けている吉本 道正さんに、お花と植物のある暮らしのポイントやお仕事についていろいろとお伺いしました。
27歳で独立開業
祖父母が葬儀屋を営んでいて、大学生の頃からアルバイトで手伝いをしていました。そのうちに葬儀専門のお花屋さんにもアルバイトに行くようになったのが、お花に触れるようになったきっかけです。
昔は、葬儀用のホールもなかったので、ご自宅で葬儀のお花を飾ることが多かったんです。
家の人がお花を見て喜んでくれる姿が印象的だったことや、先輩たちがお花を挿している姿がカッコ良かったこともあり興味を持ちました。
出身は奈良県なんですが、大学で経営を学んだあとに大阪の葬儀関係のお花屋さんで1年修行しました。仏花からスタートして、独学で勉強して東京に行ったり、ショップを回ったりしました。
27歳の時に奈良県に「フラワーショップ hanamasa」をオープンし、2018年に店名を現在の「The Plants」に変更しました。お花も観葉植物もひとつのくくりなので、「フラワーショップ」という言葉が与えるイメージに縛られたくないと思ったのが店名を変更した理由ですね。
葬儀ではその人らしさを大切に
「The Plants」では、生花だけではなく観葉植物やドライフラワーも取り扱っていますし、葬儀もお引き受けしています。フラワーショップや植物屋さんといったくくりではないんですね。
そもそも葬儀のお花屋さんは、急に仕事が入ることが多く、年中無休です。短時間でお花を集めるのは難しいことも多いので、在庫を抱える必要があるんです。だから、フラワーショップをスタートしました。
軸としてもともと葬儀屋さんがあって、展開としてフラワーショップの流れなんですよ。
他の葬儀会社さんには、ある程度マニュアルがありますが、うちはマニュアルは作っていないんです。
葬儀が執り行われる時期のお花、例えば夏だと向日葵をメインに入れることで、お花を通じてその時期になったら故人を想い出し偲んでもらえる。これがうちの強みだと思います。
ふと香るスイートピーで、記憶がよみがえることってありますよね。そして、「その人らしさ」も大切にしたいと思っています。赤が好きで、服も車も赤なら、祭壇を全て赤にしてその人らしさを出したいです。
昔みたいに、「葬儀はこうあるべき」という考えはなくなってきて、自分らしさやその人らしさを大切にした葬儀が増えてきました。
葬儀は結婚式みたいに前もって分かっている仕事ではないので、深いし面白いと思います。
生花の仲卸も手掛ける
基本的には、ドライフラワーと生花のアレンジメントが多いですが、生花の仲卸などいろいろな業務を行っています。仲卸は、「マックスフラワーサポート」という屋号で行っています。
奈良県には大きな市場がないので、大阪府にある鶴見市場に行き、注文に応じてお花を購入する代行です。市場に行くのには権利金が必要ですし、奈良県から大阪府に足を運ぶのも時間が掛かりますよね。仲卸を通すことによって、コストや時間を節約し、季節のお花を仕入れることが出来るんです。
コロナ禍の影響で、大阪市場の競りは夜の19時からリモートで行われるようになったんですよ。しかし、写真はあるけれどもそれだけで判断するのは難しいです。
だから、「この産地のこの方なら」という信用買いを行います。お花の名前や品種、生産者等級で購入を決めるんです。
単にお花の良し悪しを知っているだけではなく、生産者や産地まで思いを巡らせることが大切なんです。
お花の等級は、普段お花屋さんで購入していると見聞きする機会がないと思います。等級によって花持ちが違うんです。
一番良いのが「秀」や「特」、その次が「優」で、その下が「良」です。等級が異なるだけで、トルコキキョウなら1本で200円から250円も価格が違います。
1本ずつ売るなら茎が曲がっていないものが良いので、一般的に切り花として店頭に並ぶのは一番良い等級のお花です。アレンジメントの場合には、茎が曲がっているものでも使うことができます。
奈良県ではお花だけではなく「枝もの」も人気
奈良県は、平群(へぐり)産の小菊が日本一で、その他に薔薇の産地としても知られています。
大阪府の鶴見市場では、夏場には長野県や北海道の寒冷地のお花が並び、冬場には東京以西の産地のお花が並んでいます。
奈良県では、特に枝ものを良く用いますね。夏場に枝ものだけを飾る方も増えてきていると思います。お花より持ちが良く、ナツハゼやエダハゼといった枝ものは、涼しげで緑を身近に感じることができます。
「枝もの」というとパッと思い浮かばない方もいらっしゃるかもしれません。
けれども、桜や紫陽花など、認識がないだけで枝ものを見る機会は多いので、日本人にも馴染みやすいと思います。
奈良県にはお寺さんや神社さんが多く、お墓に足しげく通う方もいらっしゃいます。小さい頃から仏花などに触れて、お花に親しむ機会が多いかもしれませんね。
奈良県では仏花は庭で育てている方が多いのですが、そこに沿え花として切り花を購入される方が多いです。
そして、関東と関西では仏花の形が違うんです。
関東では花束のようなイメージで、洋花も人気がありますが、関西では下草というのが入り、緑が多くビシッと整えられたものが人気です。
個人的には、仏花やお悔やみのお花も和洋コラボをするのが一番綺麗だと思います。スタイルとしてカッコいいんですよね。
生花とドライフラワーの注意点
切り花は、お花屋さんが水揚げをしていますが、水に浸かる葉っぱを全て取ってあげるのが基本です。
夏場は特に、水が腐ってバクテリアが沸いてくるので、毎日水を変えてあげてください。水が清潔だとお花も応えてくれますよ。お花の水は、基本的に水道水を使えば問題ありません。
それと、生花を長持ちさせるためには、湿度と気温が大切です。
蒸し風呂になるような暑い場所は枯れるのも早いですし、湿度が高いとカビが発生します。かといって乾燥し過ぎたらパリパリになってしまうので…。特に梅雨の時期は、カビが発生しやすいので注意が必要です。
ドライフラワーをご自宅で作るのであれば、乾燥している所を選ぶととても綺麗に乾きます。部屋に暖房を入れておいて乾かしていくのが理想ですね。
ドライフラワーの魅力
ドライフラワーはアレンジがしやすく、水が必要ないので飾りやすいですよね。高温多湿や直射日光が当たる場所を避けるなど、基本的なことに気を付ければ、どこにでも飾ることができます。また、組み合わせて飾れるのも魅力のひとつです。
ドライフラワーは、オーストラリアと南アフリカから輸入されたお花が多いです。「ワイルドフラワー」と呼ばれていて、朝は寒いけど日中は暑い寒暖差がある土地で育てられたお花のことを指します。
生花で日本に運ばれて、国内でドライフラワーにする処理を行います。輸入物は特に葉ものなどが良くて、しっかり乾いてくれますね。
ガーベラみたいに水分が多いお花は、ドライフラワーになりにくいんです。途中で茎が腐ったりしてしまうので、乾燥機に入れたりといった対策を行います。
生花だけではなく、ドライフラワーという選択肢が増えると、楽しみや興味が広がると思うんです。
ドライフラワーのニーズは女性だけではなく男性にもあり、フェイクグリーンを置いていた所にドライフラワーを飾る方もいらっしゃいます。
それに、ディスプレイやレストラン・カフェなどの店舗は、ドライフラワーを飾っている所も多いですね。
「コラボレーション」が大切なテーマ
友達に家具職人がいて、額から手作りしたドライフラワーのインテリアアイテムは、個人宅だけではなく、美容室やカフェのディスプレイにも人気があります。
また、東京の「ハグス」という家具屋さんで販売しているドライフラワーのランプシェードは、2~3年位もつインテリアアイテムです。
コラボレーションアイテムは全て1点もの。周囲にいる素晴らしい方々の力をお借りして、これからもどんどん挑戦していきたいです。
額やシェイドはリメイク可能です。買って頂いたものがリメイクによって、新しい命を紡いでいくのはワクワクしますね。
「生花」や「植物」の枠を超えて
「The Plants」では、生花をメインに扱っています。
「The Plants 天理店」では、ドライフラワーや植物を販売しています。
The Plants 天理店は、TUTAYA 天理店内にテナントとして出店しています。TUTAYA 天理店がOPENした2017年に、店内のディスプレイを手がけました。5年区切りで、TUTAYA 天理店の店内のテナントを入れ替えるということでお声がけを頂き、出店することになりました。
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The Plants 天理店 Instagramはこちら
生花や植物という枠に捉われることなく、ライフスタイルに寄り添った提案をしていきたいと考えています。
ニーズに合わせて足を運んでくださると嬉しいです。
些細なことでも、気軽にご相談ください。
吉本 道正(よしもと みちまさ)
「The Plants・The Plants 天理店」オーナー
「マックスフラワーサポート」オーナー
葬儀屋のアルバイトをきっかけにお花に触れるように。
27歳で独立開業し、生花店を営む傍ら仲卸や葬儀のフラワーデザインに携わる。
ライフスタイルの中に溶け込んでいける存在を目指し、他業種とのコラボに積極的に挑戦中。